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ミステリ感想-『女王国の城』有栖川有栖

2007年11月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
急成長をつづける新興宗教団体の聖地、神倉。
聖地に消えた江神二郎を追い、神倉へ向かったアリスら4人。しかし「城」と呼ばれる総本部はかたくなに入城を拒み、どうにか入ったものの思いがけず殺人事件に直面。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は、必死に脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し……。


~感想~
傑作傑作大傑作。あの歴史的傑作『双頭の悪魔』の続編として出すだけはある。15年待たせただけはある。
正直、終盤まではあまりに冗長な地道な展開に辟易し、読み進める速度も落ちていたのだが、解決にいたって一変。
まさに目から鱗が落ちる謎解きに感服。あれだけ精緻な謎がまさか(ややネタバレ→)たった3つの手がかりで砕け散るとは!
過去と現在の事件が表裏一体、有機的に結びつき、たったひとつの真相を導き出すあたりは本格ミステリならではの感動。これぞ本格の醍醐味、100%混じりっけなしの本格の中の本格。
さらにさらに終局にいたって作品世界全体を覆っていた不穏な霧が、一瞬で消えさる魔術的な真相。恐れ入りました。
気の毒なのは、これでまた 江神シリーズ>火村シリーズ という図式はより定着してしまうだろう。

『双頭の悪魔』から15年、奇蹟は2度起きた。2007年度最高傑作ここにあり。


07.11.5
評価:★★★★★ 10
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