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ミステリ感想-『理由あって冬に出る』似鳥鶏

2007年11月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
芸術棟にフルートを吹く幽霊が出るらしい。
幽霊の噂におびえた部員が練習に来なくなってしまい、幽霊を否定する必要に迫られた部長に協力を求められ、葉山は夜の校舎へと足を踏み入れた。
しかし予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは?
06年鮎川哲也賞・佳作。


~感想~
受賞作の「ヴェサリウスの柩」に納得がいかなかったのだが、佳作のこちらもやはり納得がいかず。なにに納得がいかないかといえば、賞を与え出版するほどのものなのかと。
高校生にしては純粋で健全すぎるが、そつなくしっかりと描き分けられたキャラや、限度を超えない軽妙な文体はすいすいと読めるのだが、ミステリとしてはどうにもトリックが物足りない。
いまどき「幽霊が出た」という謎自体が弱いし、仕掛けられたトリックもいまどきの読者には食い足りない。プロローグと真相が二重にかみ合うところや、タイトルの意味が明かされるあたりは見事だが、全体的にスケール不足は否めない。
謎やトリックが、キャラ造形や筆力に早く追いついてほしいと願うばかり。


07.11.1
評価:★★ 4
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