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ミステリ感想-『人間動物園』連城三紀彦

2007年11月25日 | ミステリ感想
~あらすじ~
記録的な大雪に覆われた街で、汚職疑惑の渦中にある政治家の孫娘が誘拐された。被害者宅のいたる所に仕掛けられた盗聴器に、一歩も身動きのとれない警察。追いつめられていく母親。そして前日から流される動物たちの血……。二転、三転の誘拐劇の果てにあるものとは。


~感想~
誘拐トリックの新境地。
誘拐ミステリといえばトリックが仕掛けられるのは誘拐方法や身代金の受け渡し手段、犯人の正体などが妥当なところだが、本作では全く予想だにしない部分にトリックが待ち受けており、度肝を抜かれること請け合い。
トリックだけではなくそこは連城三紀彦、圧倒的な筆力で多くの人物を書き分け、しかも誰もかれもが怪しく見える。それでいて複雑な事件も心理描写も解りづらい部分が全くないのだから流石である。
中盤やや流れが止まり冗長になるきらいもあるにはあるが、いかにもといった結末まで飽きさせることはない。誘拐ミステリの白眉。

07.11.24
評価:★★★★ 8
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