~あらすじ~
仙台で行われた金田首相の凱旋パレード。
青柳雅春は、旧友の森田森吾に数年ぶりに呼び出された。
昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は訴える。
「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」
と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた……。
~感想~
読み始めた本を投げ出すことはそうそうない僕だが、過去に一冊だけ例外がある。それがこの伊坂幸太郎の『陽気なギャングが地球を回す』である。
だが今作のあまりの評判の良さにひかれ、思わず手にとってみたのだが――ご承知のとおり、いまさら僕がどうこう言う必要もないほどの大傑作であった。
このミスの1位に輝いたが、ミステリと冠するようなトリックもロジックもなく、それどころか確固たる真相や解決すらない。
しかしトリックもロジックも解決もなくても、伏線の回収だけで傑作はものせるのだと教えてくれる稀有の作品である。
その伏線を張る技術は恐ろしいほどで、回収されたとたんに、どの場面で張られていたか瞬時に思い出させるのはもちろん、伏線ではないものすら次々と伏線として回収していく様はまさに神業としか言いようがない。
特に物語の後半にかけて、張りに張った伏線がまとめて連鎖爆発していき、読者に息もつかせない。
さらに後日談と前半に仕掛けていたある趣向(もちろんそこでも伏線は炸裂する)で、物語を見事に締めくくって見せるのだから恐れ入る。
ネットで最もアンチと信者の多い作家の一人、異様に濃い政治色、独特の(ぶっちゃけ下手な)読点の付け方、(今作はまるで感じなかったが)寒気しか感じない自分では軽妙だと思っている会話、などなど欠点の多い作家だが、こと『ゴールデンスランバー』に限っては史上屈指の大傑作であると太鼓判を押せる。
間違いなく映画化されるだろうが、いまから怖くもあり楽しみでもある。
08.12.3
評価:★★★★★ 10
仙台で行われた金田首相の凱旋パレード。
青柳雅春は、旧友の森田森吾に数年ぶりに呼び出された。
昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は訴える。
「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」
と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた……。
~感想~
読み始めた本を投げ出すことはそうそうない僕だが、過去に一冊だけ例外がある。それがこの伊坂幸太郎の『陽気なギャングが地球を回す』である。
だが今作のあまりの評判の良さにひかれ、思わず手にとってみたのだが――ご承知のとおり、いまさら僕がどうこう言う必要もないほどの大傑作であった。
このミスの1位に輝いたが、ミステリと冠するようなトリックもロジックもなく、それどころか確固たる真相や解決すらない。
しかしトリックもロジックも解決もなくても、伏線の回収だけで傑作はものせるのだと教えてくれる稀有の作品である。
その伏線を張る技術は恐ろしいほどで、回収されたとたんに、どの場面で張られていたか瞬時に思い出させるのはもちろん、伏線ではないものすら次々と伏線として回収していく様はまさに神業としか言いようがない。
特に物語の後半にかけて、張りに張った伏線がまとめて連鎖爆発していき、読者に息もつかせない。
さらに後日談と前半に仕掛けていたある趣向(もちろんそこでも伏線は炸裂する)で、物語を見事に締めくくって見せるのだから恐れ入る。
ネットで最もアンチと信者の多い作家の一人、異様に濃い政治色、独特の(ぶっちゃけ下手な)読点の付け方、(今作はまるで感じなかったが)寒気しか感じない自分では軽妙だと思っている会話、などなど欠点の多い作家だが、こと『ゴールデンスランバー』に限っては史上屈指の大傑作であると太鼓判を押せる。
間違いなく映画化されるだろうが、いまから怖くもあり楽しみでもある。
08.12.3
評価:★★★★★ 10