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ミステリ感想-『ジョーカー・ゲーム』柳広司

2008年12月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「魔王」の異名を持つ元スパイ結城中佐により、陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。
「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」。
これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」は、次々と諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。

~収録作品~
ジョーカー・ゲーム
幽霊
ロビンソン
魔都
XX


~感想~
例年1つや2つは混じる「ふーん。これでこのミス2位なんだ~」という作品。
本名も経歴も不明という無個性なスパイたちばかり登場するが、したがってキャラ造型も無個性で、結城中佐以外はまったく区別が付かない。
その分、結城という人物のすごさを浮き彫りにさせようという意図だろうが、結城の能力が完璧すぎて浮き世離れしていて、やりすぎ感もただよう。
ではミステリとしてどうかといえば、「スパイならではのトリック」や「スパイならではの世界観」に重きを置きすぎ、「単純なトリックにスパイの感性を当てはめてみました」というだけの安易さがぬぐいされない。伏線も張られたそばからわかるような代物ばかり。ミステリとしての驚きや鋭さがもうすこしあれば……。
っていうか、ワクワクもドキドキも微塵もないスパイ小説ってなんなんだろう。
いかにも評論家や本読みと呼ばれる人種が好きそうな作品ではあるのだが、エンタメ性があまりに低い。
しかし各種ランキングでのきなみ上位なので僕の口に合わないだけだろう。興味のある方はひるまずどうぞ。


08.12.11
評価:★☆ 3
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