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ミステリ感想-『琅邪の鬼』丸山天寿

2010年07月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
始皇帝時代の中国、商家の家宝盗難をきっかけに、港町・琅邪で奇妙な事件が続発する。
甦って走る死体、連続する自死、一夜にして消失する屋敷、棺の中で成長する美女……。
伝説の方士・徐福の弟子たちが、医術、易占、剣術、推理……各々の能力を駆使して真相に迫る。
第44回メフィスト賞受賞作。


~感想~
復権したメフィスト賞からまたも有望株が登場。
安定した筆力で数多くの登場人物を描き分け、デビュー作らしい盛りだくさんの事件とトリックを惜しげもなく放り込み、丁寧な解決編で一つ残らず謎を解いて見せ、最後には歴史ミステリならではの大ボラをぶち上げる――新人離れした度胸とサービス精神が実に楽しい。
実在と虚構を取り混ぜたキャラの立ち具合も良好で、剣と奥義がぶつかり合う活劇も、むしろそっちが本題とばかりに盛り上がり、読ませどころがとにかく多い。本格マニアもメフィスト賞目当ても伝奇小説ファンも残らず満足すること請け合いの、まさにエンタテインメント小説である。


10.6.27
評価:★★★☆ 7
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