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ホラー感想-『ホラー作家の棲む家』三津田信三

2010年07月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
奇妙な原稿がある新人賞に投稿された。
私は友人から応募者の名が「三津田信三」だと知らされるが、身に覚えがない。そのころ偶然に探しあてた洋館を舞台に、私は怪奇小説を書き始めるのだが……。

※文庫版は「忌館」と改題し「西日―『忌館』その後」を追加収録。


~感想~
ホラーとミステリの両輪で活躍を続ける作者のデビュー作で、これはタイトル通りのホラー作品。
私小説の体裁をとりつつ、作中作でホラーを連載し、予想と期待通りに怪異が虚構と現実を取り巻いていき、最終的にはいまやお家芸と呼べる締め方で、怪異を作品の内側だけでなく、外側に侵食させる手際がお見事。
長大な分量の割に意外と中身は乏しいが、しかし飽かせることはなく、最後まで読ませてくれる作品である。ちっとも怖くはないけど。

ところでまたも某道尾秀介の批判になってしまうのだが、作中の三津田信三が連城三紀彦について言及した「あれほどのミステリ作品を書いた作家が、そう安々と己がミステリスピリットを捨てるわけがない。いや、仮に本人が捨てようと思っても、それは自然と滲み出してくるのではないか――。実際、その期待は裏切られませんでした」という言葉は、某道尾の今のていたらくを思うに虚しい限りである。


10.7.2
評価:★★☆ 5
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