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映画感想―『レスラー』

2010年08月29日 | 映画感想

~あらすじ~
栄華を極めた全盛期を過ぎ去り、家族も、金も、名声をも失った元人気プロレスラー"ザ・ラム"ことランディ。
今はどさ回りの興行とスーパーのアルバイトでしのぐ生活だ。ある日心臓発作を起こして医師から引退を勧告された彼は、今の自分には行く場所もなければ頼る人もいないことに気づく。


~感想~
ただのプロレス好きではなく、控え室でのやりとりやネットに流れる無責任な噂の類を楽しむプロレスマニア向けの作品。
なんせ序盤からネクロ・ブッチャー vs ミッキー・ロークのハードコア・マッチという高熱の時に見る悪夢のようなカードが展開されるので、まず日本プロレスだけのファンはここでふるい落とされる。
その後もスーパーマーケットで試合で使う凶器を物色するロークとその対戦相手。控え室での試合内容の打ち合わせでは、脚責めしようとしたら別のカードで脚を責めるから、かぶってしまうので変更するという生々しさ。試合中に仕込んでいたカミソリで額を切るところなど、コアなファン以外を次々と置き去りにしていく。

またかつて頂点をきわめたが、現在は精肉売り場のバイトで生計を立てる主人公と、演じるミッキー・ロークの人生が重なりあい、ロークの自伝的な内容になっているのも見どころ。
イケメン俳優でブイブイ言わせたロークが、50の坂を越え、整形に失敗し容姿は崩れ、表舞台からも外れうらぶれて見る影もなかったのが、この「レスラー」でアカデミー賞候補に上がり、再起を果たしたのだから、事実は小説よりもなんとやらである。
投げっぱなしジャーマンのような結末は、未来を見据えずただ現在の輝きだけを追い求める、自業自得で全てに見捨てられたものの、生き甲斐と死に場所だけは見つけてしまった男の物語の着地としては正解だろう。

WWEバカとしてついでに付記しておくと、劇中でロークと最後に戦うのがアーネスト・ザ・キャット・ミラーだったことに吹いた。
突如スマックダウンの解説に就任し、数ヶ月後「あのザ・キャットがついにリングデビューする」と大プッシュの末にリングに上がったら素人同然のしょっぱさで光の速さで解雇され「じゃあなんであいつが偉そうに解説やってたんだよ」とファンの度肝を抜いたザ・キャットが、よりにもよってアラブ人レスラー役でなぜ出てくるのか。
プロレスは面白いなあ。


評価:★★★ 6
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