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ミステリ感想-『天に還る舟』小島正樹&島田荘司

2011年02月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
休暇を取って妻の実家に帰省していた警視庁捜査一課の刑事・中村は、そこで一つの事件に遭遇する。
地元警察が自殺と判断した死体に不審を抱き捜査を開始するが、事件は連続殺人事件へと発展し……。


~感想~
島田荘司との共著という異色のデビュー作。
今でこそ小島正樹の実力は知れ渡っているが、このデビュー当時の「共著でしかも南雲堂」といううさん臭さと来たらなかった。
作品自体の質は、島田荘司の作品、吉敷シリーズの新作として見ても及第点というなかなかの出来栄えで、かえって「島田荘司が大半書いたんじゃね?」というあらぬ疑惑を招いてしまった。
内容も「一歩間違えばバカミスな物理トリックの連打」、「そんなトンデモトリックを論理をすっ飛ばして直感だけで解いてしまう探偵」、「動機は解決後に書簡でまとめて」とザ・島田荘司とでも呼びたくなるほどのオマージュ&リスペクトにあふれ、ますます「中の人は島田荘司?」という疑念を強めた。
出版社も火消しに躍起で、小島・島田間で取り交わされたメールを公開し、「島田荘司はあくまで動機面で細部にアドバイスを与えただけ」とアピールしたのだが、そもそも共著という形式をとったことが間違いで、島田荘司の名を錦の御旗にした、売らんかなの姿勢が失策だったとしか思えない。
なかなか正当な評価をされないし、また与えづらい作品だが、後のやりすぎコージー(誰か流行らせて)の萌芽とも言える、サービス満点のド派手なトリックが目白押しなので、小島ファンは迷わず読んで良し。


11.2.13
評価:★★★ 6
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