~あらすじ~
介護施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。
大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという。穏やかそうなマサヲがなぜそんなことをしたのか。
典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をするが……。
~感想~
くしくも島田荘司つながりでもう一作。
ばらの町福山ミステリー文学新人賞を受賞し、島田荘司の激賞を受けた(受けてないほうが珍しいのだが)デビュー作。
主に技量的な意味で、読んでいてむかつく文章というものには、そうそうめぐり会っていないのだが、これはその稀有な一例。
これでもだいぶ手直ししたそうなのだが、文章はとにかく煩雑かつ冗長かつ稚拙。語彙はあるものの使い方がいちいち適切ではなく、不安定な飛行を最後までつづける。感嘆符をセリフにしないだけでもだいぶマシになると思うのだが……。
島田御大もその力量の低さを認めつつも「目の覚めるような右ストレート」を持っていると激賞しているのだが、読んでいて次から次へと伏線が目に止まり、推理パートでは予想通りの展開を延々と見せられてしまい、驚く場面はほとんどなかった。
物語もせっかく解決までの期限を切られ、「今すぐ退所してもらわなければいけない」と言っておきながら「一年以内」という想像をはるかに超える長期間を提示され、それまで個人的な職業柄、リアルに描かれていると感心していたのに「ありえねえ」と感じたし、「一年以内」と無駄に長くしたのに突然「順調に回復してるからあと一ヶ月」と無駄に短くなるのもわけがわからない。始めから半年くらいにしとけよじゃあ。
解決後「あと十年遅ければ謎は解けなかった」とつぶやくのもあまりに気の長い話で、この作者の時間感覚はいったいどうなっているのだろうか。
本編に見るべきところは少ないが、島田御大の選評がすばらしい名文なので、それだけは一見の価値ありか。
11.2.17
評価:★★☆ 5
介護施設の職員・四条典座は、認知症の老人・安土マサヲと出会い、その凄惨な過去を知る。
大阪を最大の空襲が襲った終戦前日、マサヲは夫と子供二人を殺し、首を刎ねたという。穏やかそうなマサヲがなぜそんなことをしたのか。
典座は調査を進めるうちに彼女の無実を確信し、冤罪を晴らす決意をするが……。
~感想~
くしくも島田荘司つながりでもう一作。
ばらの町福山ミステリー文学新人賞を受賞し、島田荘司の激賞を受けた(受けてないほうが珍しいのだが)デビュー作。
主に技量的な意味で、読んでいてむかつく文章というものには、そうそうめぐり会っていないのだが、これはその稀有な一例。
これでもだいぶ手直ししたそうなのだが、文章はとにかく煩雑かつ冗長かつ稚拙。語彙はあるものの使い方がいちいち適切ではなく、不安定な飛行を最後までつづける。感嘆符をセリフにしないだけでもだいぶマシになると思うのだが……。
島田御大もその力量の低さを認めつつも「目の覚めるような右ストレート」を持っていると激賞しているのだが、読んでいて次から次へと伏線が目に止まり、推理パートでは予想通りの展開を延々と見せられてしまい、驚く場面はほとんどなかった。
物語もせっかく解決までの期限を切られ、「今すぐ退所してもらわなければいけない」と言っておきながら「一年以内」という想像をはるかに超える長期間を提示され、それまで個人的な職業柄、リアルに描かれていると感心していたのに「ありえねえ」と感じたし、「一年以内」と無駄に長くしたのに突然「順調に回復してるからあと一ヶ月」と無駄に短くなるのもわけがわからない。始めから半年くらいにしとけよじゃあ。
解決後「あと十年遅ければ謎は解けなかった」とつぶやくのもあまりに気の長い話で、この作者の時間感覚はいったいどうなっているのだろうか。
本編に見るべきところは少ないが、島田御大の選評がすばらしい名文なので、それだけは一見の価値ありか。
11.2.17
評価:★★☆ 5