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ミステリ感想-『顔に降りかかる雨』桐野夏生

2011年05月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
親友のノンフィクションライター宇佐川耀子が、一億円を持って消えた。
あらぬ疑いを受けた私・村野ミロは、燿子の恋人・成瀬と協力して彼女を追う。二転三転する事件の真相は?
93年度江戸川乱歩賞受賞作。


~感想~
乱歩賞を受賞したデビュー作。
失踪した女の謎が主眼だが、物語はハードボイルドにもミステリにもサスペンスにも偏らないどっちつかずで、乾いた語り口とあいまって非常に平板。デビュー作らしい手広さでネオナチ、SM、死体愛好と刺激的なテーマを多数扱いながらも、単なるつまみ食いに終わった。
ヒロインの思考はおそらく大半の男性読者には理解が及ばず、相手役となる成瀬の人物造形もまた「男が描けていない」有様であり、ストーリー展開もあっちへ行きこっちへ行きとばたばたしており、とにかく何もかもが未熟。
そういえば作者の代表作である「OUT」も登場人物たちの思考の過程が全く想像できず何もかもが「なんとなくやった」としか思えないものの、高い筆力で強引に読ませてしまうものだが、デビュー作ではまだそこまでの筆力は持っていないのが欠点だろう。
物語も事件の決着だけはつくものの、それ以外の全てが置き去りで物足りない。作者のよほどのファンか、乱歩賞マニアでもなければ手出しは無用か。


11.5.9
評価:★★ 4
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