小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『メルカトルかく語りき』麻耶雄嵩

2011年05月21日 | ミステリ感想
~収録作品~
死人を起こす
九州旅行
収束
答えのない絵本
密室荘


~感想~
これぞ本格ミステリの極北! もし本格ミステリが終焉を迎えるとして、最期の日に読まれるべき作品はこれだろう。
すべての短編がある一つのテーマで貫かれているのだが、それぞれが全く違う切り口から描かれており、飽かせることはない。
そのテーマというのがとんでもなく、茶化さず大真面目に描けしかも物語として成立させられるのは麻耶雄嵩、そして銘探偵メルカトル鮎しかいないだろう。
特に「答えのない絵本」がすさまじく、麻耶の代表作の一つ「木製の王子」を思い起こさせるきわめて精緻な論理の果てにたどり着く、不可謬にして無謬の回答には悶絶。
「収束」も名うてのミステリ作家たちが題材に使ってきたアレを、とうとう完全にミステリの枠に取り込んだかと唸り、そして呆れる代物である。
しかしおそらく大半の読者にとってはいわゆる「壁本」となるだろう今作、ミステリ初心者はもとより中堅も絶対に手出し無用。マニアの中のマニアでさえ受け入れられない人がほとんどで、受け入れられても苦笑するかほくそ笑むかと言ったところ。
頭でっかちのバカミスととらえるか、地平の果ての本格ととらえるかは、あなた次第です。


11.5.20
評価:★★★★ 8
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