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ミステリ感想-『私たちが星座を盗んだ理由』北山猛邦

2011年05月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
恋のおまじないに囚われた女子高生『恋煩い』、絶海の孤島にある子供たちの楽園『妖精の学校』、孤独な詐欺師と女性をつなぐケータイ『嘘つき紳士』、怪物に石にされた少女を愛し続ける少年の『終の童話』、七夕の夜空から星座を一つ消した彼と彼女『私たちが星座を盗んだ理由』。


~感想~
粒ぞろいの短編集。僕がその審美眼を深く信頼する「猫は勘定にいれません」のたけさんが絶賛していたため読んでみたが、流石はたけさん、読んで大正解。
デビュー作にして中二病ダメミス「クロック城殺人事件」の頃とは雲泥の差の筆力・構成力を身につけ、物語の面白さだけでも引っ張ってくれる。各編の簡単な感想を。

「恋煩い」
真相は見え見えだが、見え見えであってなおどぎつく黒い着地がすばらしい。都市伝説ネタに都市伝説ネタでオチをつけたのも一貫性がある。

「妖精の学校」
真相が「ググれ」というかつてないものだが、ググると明らかになる真相がこれまたどぎつい。読者参加型(?)の解決法は珍しくもすばらしい。よくぞこんなことを考えた。

「嘘つき紳士」
コンゲームばりの物語が望外の決着を迎える。これは完全に意表をつかれた。誤導が冴える良編。

「終の童話」
ファンタジィに謎をまぶし、投げっぱなしながら余韻を残す結末も良い。

「私たちが星座を盗んだ理由」
トリックは予想通り雑学だが、物語自体に仕掛けられた趣向がこれも冴える。ほろ苦い結末も見事。


全編通じて黒い決着を迎えるため、読む人によっては精神的ダメージを被るだろうが、なぜか後味は共通して良い。
トリックそのものはそれほどの強度を持っていないのだが、物語の完成度がいずれも高い。この作者のノンシリーズ短編集は、今後見逃すことはできないなあ。


11.5.27
評価:★★★☆ 7
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