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ミステリ感想-『連続殺人鬼カエル男』中山七里

2015年05月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
まるでカエルを弄んだように吊り下げられ、潰され、切り裂かれた死体。
住民はおろかマスコミにさえ恐れられ、いつしかカエル男と呼ばれるようになった犯人の正体は、そして被害者を選ぶ基準とは?


~感想~
本作は2009年このミス大賞を射止めデビュー作となった「さよならドビュッシー」と同時に投じられ、新人賞としてはきわめて異例の二作揃って最終候補へ駒を進め、無表彰にも関わらず刊行されたもので、「さよならドビュッシー」は未読ながら、こちらも大賞にふさわしい力作である。

まずタイトルといいカバーイラストといい「戦力外捜査官(※ドラマ版)」みたいなユーモアミステリかと思いきや、「戦力外捜査官(※原作版)」の巨悪やら絶対必要ない胸糞悪いシーンやらを凝縮したような作品なので取り扱い注意。
このくらいの猟奇殺人犯はミステリ界に掃いて捨てるほどいるのにそんなにパニックになるだろうかとか、バトルパートに力が入りすぎていちいち冗長だとか、そのわりに決着方法があっけないとか、お前のタフさはゾロかサンジかとか、いくらなんでもそれは無茶だろうという真相とか、欠点はいくらでもあるものの、それを補って余りある過剰なまでの仕掛けと、絶望的に胸糞悪い展開、正真正銘最後の一行でのサプライズなどなどあふれるサービス精神で、欠陥だらけの作品を秀作に引き上げてみせた。
まだ二作読んだだけだが、小島正樹とはまた別の、楽しいやりすぎミステリである。


15.5.13
評価:★★★☆ 7
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