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ミステリ感想-『完全なる首長竜の日』乾緑郎

2015年05月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
自殺未遂で昏睡状態になった弟と「SCインターフェース」を通しコンタクトする姉の和淳美。
漫画家の彼女は、長期連載作品を打ち切られた不安か、それとも「SCインターフェース」の影響か、現実に夢が侵食してきたように、たびたび弟の幻影に出くわす。

12年このミス大賞


~感想~
なんでも作者はもともと小劇団の脚本家や俳優を務め、小説デビューよりも前に新人戯曲賞の最終候補に残り、このミス大賞を獲得した同年には時代小説の新人賞獲得&年度5位ランクインし、鍼灸師の資格まで持つという死ぬほど多才な人物だそうで、本作も実写映画化&漫画化を果たし、まるで作者自身が小説の主人公のような快進撃を見せとどまるところを知らない。

「胡蝶の夢」を題材に、夢ともうつつともつかない物語で、本格ミステリというよりも幻想ミステリかSFミステリ、あるいは単なる純文学の範疇に入るだろう。
あまりにあからさまな伏線と、事前の予想を裏切らない展開で真相は読みやすいものの、まとめサイト「哲学ニュース」の名物カテゴリ「後味の悪い話」で採り上げられそうな(採り上げられた?)死ぬほど後味の悪い結末のおかげで、読後は満足を得られた。
何をしても食べていけそうな作者だが、たまにはこんな一風変わったミステリも描いてくれるとうれしく思う。


15.5.23
評価:★★★ 6
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