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ミステリ感想-『海妖丸事件』岡田秀文

2015年10月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
横浜と上海を結ぶ豪華客船・海妖丸。
出張を命じられた杉山潤之助は新婚旅行の月輪龍太郎と乗り合わせるが、出航前から殺人予告文が発見され一癖も二癖もある乗客たちの間に不穏な空気が漂う。
そして船内では盗難やトラブルが相次ぎ、ついに殺人が……。


~感想~
シリーズ第三作は残念ながら凡作に終わった。
まず大きな魅力の一つである明治の時代背景や伊藤博文ら偉人たちとの関わりが、航行中の船内という密室状況に設定したせいで薄くなってしまった。
それでいて事件も捜査も第一作「伊藤博文邸の怪事件」並にゆっくりと進み、「伊藤博文~」のようなシリーズ設定の説明や偉人伝もないものだから間延びした空気が終始漂う。第二作「黒龍荘の惨劇 」で矢継ぎ早に事件を連打したあの疾走感はどこへ行ってしまったのか。
肝心の真相、トリックも大掛かりといえば大掛かりではあるがさほどの意外性は感じず、仕掛けに比して伏線や綱渡りも明らかに足りない。見所は結末の章題通りの「大団円」くらいのものか。

魅力的な謎と意外な真相にテンポの良さを兼ね備えた前作から一転、古き良き時代を感じさせる……といえば聞こえはいいが、最後までのんべんだらりと流れてしまい、前二作と比較して実に物足りない一冊だった。


15.10.3
評価:★★☆ 5
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