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ミステリ感想-『チルドレン』伊坂幸太郎

2016年05月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
人質にお面を着けさせる銀行強盗、長年の確執から謎の和解を遂げた父子、2時間まったく動かない公園の人々、夫婦の離婚問題と父子の確執をまとめて解決する方法、不審な様子の友人……。
音楽青年と家庭裁判所の相談員、盲目の青年と彼女と盲導犬。彼らを取り巻く5つの謎。

04年このミス16位、文春5位、日本推理作家協会賞(短編)候補、直木賞候補、山本周五郎賞候補


~感想~
連作短編集で、言うほど読んでないが伊坂幸太郎がここまで明確に日常の謎系ミステリを志したのは珍しいのではなかろうか。
1~2話目の段階では油断していたこともあり、予想よりも遥かにミステリミステリしたトリックに足元をすくわれ驚かされたものの、注意深く読み始めた3話目以降は、謎の提示どころか問題が出されるより先に真相が見えることもしばしば。
ミステリとして驚きたければ何も考えずに読むのが吉だが、癖の強い作者にしてはきわめて平易に物語を描き、政治臭も全くと言っていいほど感じさせないほど薄めた、非常に取っ付きやすい万人向けの作品なので、わざわざミステリとしてのサプライズを期待するまでもない。
以前「死神の精度」を伊坂初心者向けと勧めたが、本作はより伊坂ビギナー向けで、しかも伊坂アンチでも高確率で楽しめるだろう良質な短編集である。


16.5.3
評価:★★★★ 8
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