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ミステリ感想-『機龍警察 火宅』月村了衛

2018年08月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
機龍警察シリーズ初の短編集。
由起谷主任が死の床にある元上司の秘密に迫る表題作、特捜部入りする前のライザを描く「済度」、最新作「狼眼殺手」の前日譚「化生」など8編を収録。


~感想~
一部の手掛かりが伏せられているが短編ミステリとしても成立した表題作を皮切りに、これまでに作中でさわりだけ書かれた逸話や、その背景が詳しく語られる作品も多く、機龍警察シリーズの世界観をさらに広げる良短編集。
過去編や外伝はもちろんのこと、特捜部の日常業務というか、長編ほどの規模ではない小事件もいくつか描かれ、そのどれもが面白く、タイトルに仏教用語の二字熟語を配し、各編のテーマに据えているのも秀逸。
特に気に入ったのはどちらかというと憎まれ役だった宮近を主人公に描く「勤行」で、シリアスな本作の中では珍しくコメディタッチの一編で、次から次へと災難に遭いながらも必死に苦闘する姿に好感度はうなぎ登り。

なぜか前2作を差し置いて文庫化され、短編集で手頃だからと最初に読もうと考える人もいるだろうが、これまでのシリーズを読んでいること前提の作品集のため要注意。ファン必読とまでは言わないものの、ファンなら絶対確実に楽しめる一冊である。


18.8.16
評価:★★★☆ 7
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