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ミステリ感想-『くらのかみ』小野不由美

2018年08月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
夏休みに大伯父の家に帰省した小学6年生の耕介は、親戚の子供たち3人とともに、暗い部屋の四隅を回る怪談を試す。
すると子供が1人増え、しかも誰が増えたのかわからず、大人たちも異変に気づかない。
家に代々伝わる座敷童子が紛れ込んだのだと驚いていると、大人たちが食中毒で何人も倒れ……。

2003年本ミス7位、本格ミステリ大賞候補


~感想~
都市伝説を試したら座敷童子が現れいつの間にか子供が1人増えました、というある種ファンシーな導入で児童書だしと油断していると、毒殺未遂事件を追うガチのアリバイ崩しが延々と続く展開に面食らう。
登場人物がむやみに多く、血縁関係は入り乱れ、子供はもちろん大人の読者もついていけないような推理のスクラップ&ビルドが繰り返され、行き詰まったところで座敷童子の怪異が再度クローズアップされ、異世界本格としての姿を表わすとともに、逆転の論理でアリバイ崩しまで解けてしまう。
つまり本作はジュヴナイルの皮を被ったガチ本格ミステリである。

語彙の使い方とか語句の説明とか、子供への配慮は随所に見られるものの、論理展開と異世界本格要素と逆転のアリバイ崩しはおそらく子供には難しすぎるだろう。
どちらかというと大きいお友達、それも本格ミステリファン向けの作品で、児童書ながら本ミス7位と本格ミステリ大賞の候補に上がったのも納得である。
推理展開がガチすぎてややこしく個人的にはさほど楽しめなかったが、それでも逆転の論理は単純明快で驚かされたし、とにかくすごいものを読ませてもらったという読後感を得た。
なんでもかの新本格の父あるいは母として知られる宇山秀雄氏が最後に手掛けた作品だそうで、本格ミステリファンにとっては最高の置き土産と呼べるだろう。

余談だが作者の夫は同レーベルで「びっくり館の殺人」なる「お、おう……」な代物を書いているのだが、妻にこんな児童書の体裁で描かれたガチ本格を出されて、いったいどんな反応をしたのか気にならないでもないw


18.8.21
評価:★★★ 6
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