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ミステリ感想-『名探偵のはらわた』白井智之

2020年09月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
名探偵・浦野灸の助手を務める原田亘は、彼女からヤクザの娘だと打ち明けられたのもつかの間、偶然にも彼女の故郷で起こった大量死事件の調査へ向かう。
そしてなんやかやあり現世に昭和史を彩る毒殺魔や三十人殺しの犯人たちが蘇ってしまう。


~感想~
今度の白井はグロくない! …グロいかグロくないかで言えばグロい描写もあるが、少女がミキサーに掛けられたり、空から降ってきては墜落死する過去作と比べれば全然グロくない。
SF界隈でも評判を呼んでいるという特殊設定も今回はややおとなしめで、しかしグロさとSFの裏で目立たなかった論理性と伏線の巧みさは全く変わらず健在であり、つまり本作は白井初心者向けと言えるかもしれない。

最大の見所は、多少ネタバレになってしまうが、カバーに書かれている範囲で言うと、昭和史に残る大事件をそのままモデルにした犯罪者と名探偵の対決である。あの有名犯罪者たちが現世で事件を起こし、それが本格ミステリとして解かれるのだ。しかもそれを書いているのは新進気鋭の変態(※褒め言葉)本格作家の白井智之。こんなの面白いに決まっているではないか。

尋常ではないグロさと変態(※褒め言葉)的・悪魔的発想ばかり目立ってきた作者だが、それらを多少薄めても本格ミステリ作家として一流であることを示し、しかもグロ耐性の低い初心者でも手に取りやすい一作である。わりと敬遠されていたが今回はこのミスランキングでも相当上位に行けるのではなかろうか。

…ところでこのカバーの女は誰なのだろうか?


20.9.11
評価:★★★★ 8
コメント (2)