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ミステリ感想-『暗黒残酷監獄』城戸喜由

2020年09月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
十字架に磔にされて殺された姉は「この家には悪魔がいる」というメモを持っていた。
弟で人妻の家庭を壊すのが趣味の清家椿太郎は悪魔を探して家族の秘密を暴いて行く。

2020年日本ミステリー文学大賞新人賞

~感想~
あらすじはそれはそれとして物語の方は、登場人物の九割を占めるキ○ガイがイキってイキってイキり倒し厨ニの限りを尽くすので非常に人を選ぶ。
しかも文章はゴミ…癖がある…好きな人は好きかも…自分の口には合わなかった。
特に序盤がゴミ…極めて読みづらく、意味を測りかねることすらしばしば。しかも登場人物は隙あらば厨ニ発言かキ○ガイ発言をするので終始ムカつ…油断ならない。

だがミステリとして見れば(さほど機能しているとは言い難いが)豊富な伏線や意外な展開と真相に支えられ実のところ悪くない。物理トリックは端的に言ってゴミ…小粒だが、終盤の怒涛の謎解きと目まぐるしい真相開示には見るべきものがある。特に舞城王太郎「九十九十九」あたりと完全に逆ベクトルで「家族とは何か?」に答えて「しまった」結末は、この作品ならではの代物で、強い印象と謎の説得力を残す。

とにかく癖のある、ありすぎる作風で、鬼畜というよりも直截的にキ○ガイと呼ぶほかない人物・発言のオンパレードに眉をひそめなければ、一部で評判を取る通り、確かにある意味で白井智之の気配を感じてしまう、強烈な個性ある作品だった。

余談だが本作は日本ミステリー文学大賞(※光文社)の新人賞を受賞したが、後半になぜか江戸川乱歩賞(※講談社)の式典がそのまま出てきて笑った。なんだこれは。乱歩賞かメフィスト賞でも落とされたのか。当てつけか。メフィスト賞から出てないのが不思議ではあるけども。


20.9.21
評価:★★★ 6
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