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ミステリ感想-『鏡館の殺人』月原渉

2020年11月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
富豪の妾の娘たちが暮らす鏡館。そこは左右対称の形状で、48枚の姿見が飾られていた。
父は年に一度だけ訪れ、娘たちに政略結婚の嫁ぎ先を言い渡す。
籠の鳥のような少女に、鏡の中から死んだはずの姉が微笑む。


~感想~
館の形がほのめかすようなある真相に序盤で気づいてしまうかもしれないが心配無用、それは早くに明かされる一要素にしか過ぎない。
むしろ問題はその先で、尋常ではないほどぼんやりした信頼できなさすぎる語り手のせいでやりたい放題になってしまっているのがネック。
こいつが依井貴裕とかのパズラーの登場人物くらい都合よくあれもこれも忘れているおかげで、どんなありえないことでも成立させてしまい、納得がいかない。
最後、ある人物が病院送りになるが、むしろ入院させるべきはこいつの方であり、ここまで胡乱すぎるとちょっと本格ミステリとして禁じ手としか思えない。
だが語り手さえおいとけば雰囲気やロジックは良好だし、非常に読みやすい文章も好感を抱いた。また予備知識無しで読んだおかげで誰が探偵役かも知らず、珍しい体験ができた。本作は全く口に合わなかったが機会があればまた別の作品を読んでみたいとは思う。


20.11.7
評価:★☆ 3
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