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ミステリ感想-『不連続殺人事件』坂口安吾

2022年04月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
山荘に集められた詩人・作家・弁護士・画家ら一癖も二癖もある変人たち。
不倫恋愛横恋慕でがんじがらめの人間関係の中で必然のように連続殺人事件が起こる。

1949年日本推理作家協会賞、東西ベスト(1985)4位、東西ベスト(2012)19位

~感想~
普通。普通に伏線が張られ普通に論理で解ける、今日的に見ればすげえ普通の本格ミステリ。しかし昭和22年に現代人が普通に読める本格ミステリを書いているのは普通にすごい。
何重にも絡み合った不倫関係の男女が山荘に集まって予告状が届くものすごいテンプレ展開で、つまりこういうミステリの元祖なのだろうか? 不勉強ながらこれを原型にした、影響を受けた現代ミステリは星の数ほどあるのだろうと思う。
1ページに1つペースで飛び出す放送禁止用語や現代コンプラ的に完全アウトな発言の数々や倫理観、ろくに捜査をしない牧歌的な警察、連続殺人事件が起きているとは思えない緊迫感のなさを改めれば全然現代ミステリだし、もっと酷い現代ミステリはいくらでもあるだろう。

ただ登場人物が無駄に多く、ほぼ全員があだ名や異名まで持っており、人間関係も入り組みすぎていて、これを平然と読んでた昭和の人はすごい。
人物相関図を教えてもらったが想定以上に多いし複雑で笑ったし、中盤に56部屋もある地獄のような見取り図が出てきてバスの中で読んでいたのに思わず吹いてしまった。

歴史的意義から本格ミステリマニアなら読んで損はないが、一般人や坂口安吾および文学ファンはおよそ手出し無用の、骨董品的値打ちが貴重な作品である。
東西ベスト(1985)4位や東西ベスト(2012)19位は古の本格ファンが投票したんだろうなあ。

それにしてもやっぱり昭和29年に「妖異金瓶梅」を書いた山田風太郎は異常である。現代的に見ても斬新過ぎるんだぞあれ。
なお角川文庫版の高木彬光の解説にはとんでもないネタバレがあるので要注意。それ絶対書いちゃいけないだろという一文がある。


22.3.8
評価:★★★ 6
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