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ミステリ感想-『天使の囀り』貴志祐介

2022年04月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
精神科医の北島早苗の恋人で、作家の高梨はアマゾンの自然調査に同行した。
タナトフォビア(死恐怖症)に取り憑かれていたはずの彼は帰国後、性格が別人のように変貌し「天使の囀り」が聴こえると言う。

1998年このミス5位

~感想~
「黒い家」で日本ホラー小説大賞を射止め、後に「鍵のかかった部屋」でドラマ化、「新世界より」でアニメ化、「悪の教典」他多数で映画化と多ジャンル・多媒体でヒット作を生み出す作者のデビュー3作目。
1998年にこのミス5位にランクインしたが、文庫版の解説者(※あえて名は伏す)の指摘する通り、一体どのジャンルに着地するのかが魅力の一つとなっている。
しかし一つのジャンルに特定するのは難しく、しかもどのジャンルとして読んでも出色の出来の、幅広い読み方を受け入れる作品で、個人的には作者の中で最も面白かった。
とうていありえないような大風呂敷を広げるのだが、それを綿密な設定と豊富な知識で支えるのも上手く、説得力を持たせるのに成功し、それでいて難解なところが少しもない筆力はとても3作目とは思えない、後の飛躍を感じさせる。

余談だが、途中で悲しきモンスターが「……シテ」「コロシテ」と言ってて、あれ実在するんだと笑った。
1998年刊行だから元祖コロシテかもしれない。


22.3.17
評価:★★★☆ 7
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