闇夜を貫き絹を裂くような女の悲鳴、晩酌のとっくりを四、五本ちゃぶ台の上に倒して妾宅の二階で転寝をしていた株成金の濠衛門、むっくりと畳の上に体を起こすと何事ならんと窓から顔を突き出す。「あれ、今のはなんでござんしょうねえ」とめかけのお玉も下から上がってくる。
「また、例のヤツが始まりやがった」と濠衛門は舌打ちをする。――――とまあ、こういった按配で。妾宅と申しましても土地不況のいまでも坪五百万円はくだらないという全国有数の一等地でございます。お向かいさんはあちらのかたで。最近は日銭商売でうなるようにカネが流れ込んでくる。税金なんか払わないから溜まる一方、言わずと知れた半島のかたですな。さかんにテレビで広告をしていますからどなたもご存知の会社の社長一家でございます。そういう人でもこういう一等地に住める方が増えてきました。
それが、少なくとも月に一回は町内に響き渡る口げんかの罵声、怒声。しかも女性の声が他を圧しております。ご存知のかたは先刻ご案内でございましょうが、大陸人、半島人の口げんかはすざましい。靖国批判もその延長線上でしょうな。身内の喧嘩となると、さらに激しくなる。それにあれは民族性なんでしょうか、豪邸なんですから、窓を閉め切って怒鳴りあう分には、広い庭もあり、木が屋敷を取り囲んで植えてありますからそうそう外には聞こえない。日本人ならまず、そう激しい罵りあいはしないし、たとえ喧嘩するにしても隣近所を気にするものです。
ところが、半島人は他人に聞かせるために罵りあうんですな。窓を開け、庭に飛び出してきて喚き散らす。いやはや、とんだ騒音迷惑です。もっともこっちにはチンプンカンプンなあちらの言葉ですから内容はわかりません。しかし、最初はびっくりしましたよ。何が起こったかわかりませんでした。殺人事件でもあったのかと思って警察に連絡した人もいました。
何回も続くうちに家族の喧嘩らしいと分かってまいりました。まあ、毎日というわけでもないし、最近はまた始まったかとおかしみも感じます。隣のうちに向かって攻撃してくるのではないと分かったので、野良猫の喧嘩を見物するような気分でございます。
半島とはどこだって言うんですか。鴨緑江を北限とし、東は日本海、南は北対馬海峡(旧朝鮮海峡)そして西は黄海に囲まれた地域でございます。