東方のあけぼの

政治、経済、外交、社会現象に付いての観察

珍しい蕎麦屋 

2022-05-15 11:05:35 | 街で聞いたはなし

 日常、蕎麦屋に入るときに屋号など気にしない。そうして大体どこの店でも同じ味だ。ばらつきが少ない。大体同じ味だし、昔から何回食ったかしれない。だからそばと言うものはこういう食味だと無意識に思っている。ところが最近とんでもない店にぶち当たった。
 ちょっと店の名前が変わっている。見たことも聞いたこともない店だ。更科堀井という。更科と言う蕎麦屋は無数にあるが堀井と付いた店には二度しか入ったことが無い。それも同じ店だ。
 ところが店に置いてある、あれは何と言うのかな、宣伝用のチラシみたいなものには創業が江戸時代で支店がいくつもあると書いてある。そして難しいことが書いてある。蕎麦屋が気取っても始まらないと思うんだが。
 この店は大手百貨店の中にあり、たしか数年前に開業した。そのころ一度入ったことがあるのだが、びっくりしてその後は敬遠していた。ところが最近近くに行ったところ、店の前には行列だ。評判がいいらしい。あれから数年経っているから味が落ち着いたのかな、と試しに入ってみて呆れた。全然良くなっていない。
 まず、注文を取りに来た時にそば粉は何にしますか、と聞かれた。なんでも三種類あるらしい。いやさ、驚いた。その見識張った態度には。出てきて箸をつけてまた驚いた。
 まずシルの珍妙なのにびっくり。そばつゆと言うのは大体味がどこでも同じだが、ここのは出汁の味がしない。醤油を溶かしただけみたいだ。これはいけない。テーブルの上には薬味が三種類置いてある。たくさん置くのが見識らしい。普通は八味唐辛子だけだろう。試しにせっかくだから見たこともない薬味をかけてみたがちっともピリッとこない。それに容器に内容が書いていない。通がそんなのが無くても分かるのだろう。しかしふたを取らないと分からないから通にも不便じゃないかな。第一多数の客の手に触れて不衛生だ。
 次はネギだ。これがほとんど煮てなくて固くて噛み切れない。そのまま飲み込むと喉に切り傷が出来そうだ。ネギは柔らかく煮込んでネギ本来の甘みうまみが出てくるものだ。どうなっているのだ。
 それからそばだ。分からないから「ふつうのでいい」と指定したのだが、これが箸で掬えない。べとべとドロドロのソースをかけてかき混ぜたスパゲッテイのようにもつれ合った上にねばついて塊になっている。無理をして持ち上げようとすると何が起こるか分からない。しるがあたりに飛び散りそうだ。だから顔を汁のほうにもって行って粘着して団子のようになっているのを慎重にかみ切るわけだ。まるで幼児が食べるみたいだ。
 蕎麦と言うのは夏目漱石の坊ちゃんの美学者先生のように頭の上にまで掬あげる必要はないが、そうするとこれまた気障になるが、せいぜい十五センチくらいは救い上げてから食べるものだが、そんな危険なことは出来ない。
 悪戦苦闘して食べ終わったら、手がべとべとだった。おそらく注意して食べたものの、汁が手に飛び散ったのだろう。気持ち悪いからおしぼりで拭ったが、ごしごしと何回拭ってもベトベトがぬぐえない。店を出てからコンビニに飛び込みアルコールティッシュを買って二枚使ってようやくベトベトが落ちた。あれは何だったんだろうね、汁の味を『よくするために』なにか化学薬品を使っているのかもしれない。



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