ハードボイルド論を進める前に一つ触れておく。この映画が成功している理由は印象的に描かれた恩地のハードボイルド倫理的生き様に加えてと国民航空に根付いた悪漢グループを見事に描写した点があげられる。
いわばピカレスク・ロマンとしての側面である。悪漢といっても、日本左衛門とか、幡随院調兵衛といった庶民に愛された大悪党ではない。
どんな悪事をするにしても、徒党を組んで闇を動き回る腐れネズミの集団である。腐れネズミに寄生する腐れシラミの大集団である。よく本質を活写摘出したシナリオになっている。
同じ時期に、一つに企業によくもこれだけ腐れネズミが集まったものよ、と感心する。腐れネズミには同類を見分けるセンサーがついている。こいつは餌でつれば絶対に寝返るな、裏切るなという仲間を見つけるセンサーが発達している。
根性の腐ったやつばかり狙う。ゆとりのある良識ある家庭からの社員には目もつけない。目の前に腐ったチーズをぶら下げれば一生言われた通りなんでもやる手下を補給する嗅覚があったのである。
こんなやつらの塊が企業の中枢を占めるようになれば、企業と言う家は白アリに占領された家のように20年もすれば、救いようがなくなる。