ロシア天然資源省は、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」に対し、事業化の調査承認を取り消すとの声明を発表した。すでに8割方完成していた事業の停止命令である。この国のお国柄、地ならしなどなく突然の事業停止に、三井、三菱に対する同情的な報道が主体となっているわが国の報道からは実情が見えてこない。
サハリンの開発には、オオワシなどの営巣地域の破壊、パイプラインの海底設置による世界有数のコクジラ繁殖地の破壊、サケの遡上する河川の破壊、周辺に配慮しない道路の設置、油などの垂れ流しなど目に余る無原則的な開発は当初からかなり指摘を受けていた。環境団体が開発に伴う環境汚染と野生生物の生息域の破壊などで、事業の見直しを申し入れていたが、こうした面からの報道はほとんどない。
この冬に知床半島を中心とするオホーツク海岸に5000を越す、海鳥が油に汚染されて死亡して漂着した記憶は新しい。海岸流れ着いた海鳥の 10倍は超す羽数が犠牲になっているものと推測される。ロシア側はこれには全く関係していない、と強く反論していたが、誰の目にもサハリンの油田開発に伴う海鳥たちの犠牲であることは明らかである。
垂涎のサハリンの豊富な天然資源にばかり目を取られて、この地域が豊富な野生生物の生息地であることも忘れてはならない。本事業の停止は歓迎されるべきことである。
サハリン2に関する環境問題については「FoE Japan」のホームページに詳しい。