日豪EPA交渉が始まる。日本の農業は大きなダメージを受ける。とりわけ、製品が重複す る北海道農業は、1兆3千億円の損賠をこうむり壊滅的状態になるとまで言われている。
農業関係者は、必死になってこれを食い止めようとあらゆる手段を講じている。
オーストラリアは南半球にあるため、北半球で半年前に不作だった農業製品を、選択的に栽培できる強みがある。そもそもが、オーストラリア農業は輸出産業として存在する。農業と言うよりも商業なのである。
今年のオーストラリアは旱魃のために、コメの生産量は10万6000トン、綿花は25万トン、ソルガムは99万6000トンである。前年比、コメは90%減、綿花は42%減、ソルガムは51%の減少となっている。生産者は大変である。
このような国に、日本の食卓を任せていいものだろうか。車などを買ってほしい連 中の思惑ははっきりしている。が、豊作時の生産量と価格を基準にされたのでは、日本はたまったものではない。
昨年度の北海道の生乳生産量は生産調整のために、おおむね3%ほど減らされたが、おかげで手術をする牛の胃の病気「第四胃変位(通称ヨンペン)」が激減した。穀物の給与量を減らしたためである。おかげで、牛は健康になって獣医さんは暇になり周辺産業は物が売れず、酪農家の収入もかなり落ち込んだ現実にある。
日本の農業の本質はここにある。経費をかけて周辺産業を潤す、つまりコストをかけて生産量を伸ばしてきた日本農業の体質、政策に問題がある。労働単位あたりの生産量が農産物価格を決定する。農業としての生産性を上げても農家はやってゆけない。
政府は、日本の農業を守るとは言っているが、高生産量の大型農業を視野に入れた発言である。オーストラリアと同じ思考では日本の農業、食料は守ることができない。
牛が健康になると、周辺産業の実入りが減って酪農家の収入も減るようなシステムこそおかしいのである。健全な農業としてのあり方こそ問われるべきである。