北朝鮮が”核”兵器のありがた味を存分に享受している。ちょっと核開発しただけで、資金 凍結は解除されるし肥料も燃料もたっぷりもらえる。コメだってそのうち来るらしい。
ここには、核兵器を廃絶し平和を希求する理念は全くなく、核抑止論だけが幅を利かせていることを意味している。
国家が核兵器を持つことで、相互のけん制が始まり、「垂直の拡散」すなわち、核所有国家が技術的なレベルが上がったり、多くの核兵器を持つようになる。更に、「水平の拡散」 が始まる。つまり核兵器の持つ、戦略的な重要性を認識した国家が、核兵器を持つようになる。こうして核拡散が始まる。
科学者たちが開発した技術が、人を殺すばかりでなく世界の破滅にいたるような兵器を開発したことを反省する「パブウオッシュ会議」が作られた。会議の主要なメンバーである晩年の湯川秀樹は、世界平和と核兵器根絶に命を燃やした。
このパブウオッシュ会議は1993年にノーベル平和賞を受賞したが、科学者たちの訴え は何処にも届いていないようにみえる。
現在8カ国が核兵器を所有している。このうち米、露、英、仏、中の五ヶ国が、自分たち以外は核兵器を持たさないようにしたのが、核拡散防止条約である。この条約は、核兵器をなくそうとしているのではない。世界の覇権 国として互いにけん制しあいながらも、水平拡散を嫌っているだけなのである。
この五ヶ国に、インド、パキスタンと北朝鮮が加わった。が、疑わしい国が更に3ヶ国ある。現在、世界に2万7千発もの核弾頭が存在する。ロシアが、4400発持っているが、アメリカは一国で2万発近く所有している。アメリカの、覇権主義の自信と実力行使にはこの背景がある。
日本は、たった1発持っているかもしれない最貧国の北朝鮮の核兵器の脅威ばかりを唱えるが、これはいかにも片手落ちである。核兵器そのものを廃絶させる姿勢が個々にない。わが国も持たなくてはと、安倍ボンは発言した経緯もある。
核兵器を単に持つなと主張するだけではなく、わが国は唯一の被爆国としての核の恐怖と、唯一の平和憲法の所持国家として、世界戦略から離れたところから「核廃絶と世界平和」を訴えてゆくべきである。墓の下で、湯川博士がさぞ嘆き悲しんでいることであろう。