久間防衛庁長官が「原爆やむを得ない論」で、辞任した。日曜日の早朝、彼は間違った発言をしていない、辞任などしない、適切な説明場所を設ける・・・などと発言していたのに辞任した。
原爆投下で日本は終戦に踏み切ったとする、アメリカのネオコン系の人たちの見解がある。神風特攻隊や硫黄島戦や沖縄戦に見られるように、日本は徹底抗戦を行っていた。それを諦めさせたのは、原爆だというのである。
当時の日本政府の中には、阿南陸軍大臣のように原爆を落とされても、まだ本土決戦が残っていると強硬な意見が大勢を占めていた。彼らを諦めさせたのは、日ソ中立条約を締結していたソビエトの参戦である。ところが長崎に原爆が投下された、その日の午前中にソビエトは参戦していたのである。
つまり、久間防衛大臣は事実関係すら知らずに、アメリカのネオコンたちの意見を紹介したのである。安部ボンが「これはアメリカの意見の紹介であると」発言しているのも、ネオコンの意見に彼が近いからである。
原爆にはもう一つの側面がある。ヤルタ会談を受けて、日本が到底受け入れることがない無条件 降伏であるポツダム宣言を、連合軍は日本に突きつけた。当然日本が拒否するのを受けて、原爆を投下したのである。東西冷戦の入り口にあって、ソビエトにその威力を見せ付けたかったのである。トルーマンが、ポツダムでスターリンに耳打ちしている。
原爆は、非人道的無差別大量破壊兵器である。広島投下直後に、日本はスイス政府を通じてアメリカに抗議文を送っている。この辺りのことは、吉野作造賞を受賞した「暗闘」長谷川毅著、中央公論社に詳しい。
久間氏は、原爆の非人道性をネオコンにすり寄って容認するばかりか、歴史的背景にすら無知なのである。こんな人物が、防衛省の最高責任者であることを恥ずかしく思う。