日本の食料自給率は40%ほどといわれている。これはカロリー基準での話である。穀物の自給率は25%ほどである。穀物の自給率をわかりやすく説明するために、やや簡素化して説明をいたします。我が国はおおむね4000万トン足らずの穀物を消費している。
我が国が自給する穀物とは米であるが、800万トン程度になっている。輸入する穀物の3000万トンのうち、2000万トンを家畜が食べている。とりわけ、鶏が半分量の1000万トンを食べている。残りを豚と牛が食べている。
鶏の食料(飼料)自給率は0%である。豚は5%程度、肉牛は10%程度、乳牛でも30%程度であろう。北海道の東の我々のところでも40%を切っていると思われる。
「北海道牛乳」のパッケージには青草を食べる、写真のような放牧風景が必ず描かれているが、そ うした農家は急速に減少している。北海道牛乳と府県の牛乳の間に、ほとんど差がない現実にある。
食糧危機になると、日本人が真っ先に犠牲になるといわれているが、それは正確ではない。真っ先に犠牲になるのは、日本の家畜であり畜産農家である。
地球上で10億人が飢餓状態にあるといわれているが、先進国の家畜はそうした国の人間から間接的に奪った形で、大量の穀物を生産効率を上げるために給与されている。家畜の診療をする獣医師は、極限まで効率を求められた肥満状態の家畜との戦いになる。
日本に安価な穀物を大量に送り続けるアメリカとは、安全保障関係にあり安定的にあるいは優先的に購入させてもらっていると・・・思っていた。ところが、飼料用穀物をバイオ燃料生産に向けるとアメリカが言い出したのである。5年後には、輸出する飼料用穀物は無くなると、報告されている。
食料を自給できない国家は独立国家ではない。日本は、今また自給率を下げるために、オーストラリアに車を売り込む条約の交渉にさなかにある。情けない国である。
拙書参照ください。 そりゃないよ獣医さん―酪農の現場から食と農を問う |