産経新聞がおかしい。この頃起きた二つの事件「沖縄少女暴行事件」と「イージス艦衝突事件」であるが、極めて異常な「正論」を、右翼評論家に書かせている。
少女暴行事件は、花岡信明と称する評論家が、少女の告訴取り下げで事件は一転した。日本人の奥さんと別居中の米兵は、不起訴処分となって保釈された。強姦なら親告罪である。米兵は傷害罪にもならなかったので、少女側に問題があった事件だと、花田は結論付けている。
強姦の事実もなくなり、傷害も告訴されなかったこの事件は、少女の演出であるというような内容である。少女が、これ以上世間で騒がれ、あちこちで証言することに耐えられなくなって告訴を取り下げたとは一言も触れていない。女あさりをやっている米兵のバイクに、無防備に乗る「少女のしつけ」こそ問われるべきだと言うのである。
この評論家には、日本にはどのようなことがあっても米軍がいてくれることが前提にある。沖縄の自治体は事件をここぞとばかり攻め立てるのは、反米・反基地運動に手を貸すものだというのである。これが正論だというのである。
イージス艦衝突事件についても、花田紀凱(かずよし)と称する人物が、漁船が避けるべき事件だと書いている。大きなイージス艦など、ゆずうが利かないから、小さな漁船がこうした場合避けるべきで、巨大なイージス艦はそんなことができない。これが公海上での常識、漁師の鉄則だというのである。
公海上の国際ルールは右に見た船が右の避けるとある。このことはどうなのか?漁船は明らかに、仲間の証言などで衝突回避の行動をとっているが、イージス艦は直前まで自動操舵だった。また見張りもロクな報告いもしていなければ、判断ミスを重ねている。艦長は、混雑する日本近海に来たのに、寝ていたし自動操舵も知らなかった。それでも漁船に瑕疵があるのか?
それより何より、その後のとった防衛省の報告や調査内容も、二転三転する様子は明らかに責任をどこまで逃れらるかを模索した結果の行動である。BSEで同じことを農水官僚がやっていたのをよく知っている。この事件は、いまだ行方不明とされているものの、2名の死者が出ている。
「そこどけそこどけ、兵隊さんのお通りだい」の軍隊優先思想が、防衛省内に今も残っているのである。戦前なら、軍人としての気概もあり緊張感もあって、民衆は恐れおののいていたものである。その形だけが残っている官僚機構の、ふがいなさが起こした事件である。
この産経新聞が取り上げた、2人の「正論」を述べる評論家には、国防は概念として存在しているものの国民や人の命の感がる視点は持ち合わせていない。
自衛隊は、行政改革で多くの省庁が人員削減を受けている中で、唯一実績を積んでいるところである。福祉や教育予算なら大いに論議されるところであるが、軍事予算は平気で1400億円もの役に立たないイージス艦を、アメリカの言いなりでつくる。
産経新聞は暴論を好むようである。花で始まるこの二人の評論を無造作に掲載する神経が信じられない。