日本の家畜の多くは、家畜共済に加入している。とりわけ家畜としては寿命の長い乳牛は、ほとんどが加入している。これは国が半分掛け金を負担する、健康保険と生命保険を兼ねた制度である。
この制度は「農業災害補償法」という、法律で維持されている。お米や果樹にも、農業共済制度はある。家畜の場合は、病気になった時の治療と、使えなくなって廃用になる双方の損失を補償することになる。
乳牛など大動物は、一畜舎すべてが加入しなければならない。それぞれの地域と、最近ではそれぞれの農家の事故率に応じた、掛け金率が設定されている。
当然若牛の事故は少ない。年を経るごとに、病気が多くなり病態も深刻になってくる。しかしながら、畜舎の特定家畜を選択的に加入させることはできない。全頭もれなく加入しなくては ならない。
一畜舎全体の事故率が農家ごとに設定されているのであるから、事故の多い高齢牛を、元気な若牛たちが補てんすることになる。事故率が高くなる高齢牛といえども、若い時があった。その時は支えてもらったことになる。保険とはこうして、設定された被保険者の事故率で計算されて成り立っている。
今回の政府が出してきた「後期高齢者医療制度」は、こうした保険の基本的原則と精神を踏みにじるものである。事故率の高いものを別扱いすることは、保健制度とはいえない。被保険者よりも、保健制度の維持を優先させた不届きな制度である。家畜以下の制度である。
該当者の怒りは怒髪天に昇り、文字通り「畜生(チクショウ)」である。とりわけ、大家族が当然の農家にあっては、家族から切り離されることへの怒りもあるが、ほぼ全例が掛け金が上がることになっている。
制度の基本原則を否定したこともさることながら、事前の説明が全くなかった。家畜共済の場合は、事前に不利になることは周知させねばならないと指導されている。金融取引法とやらに抵触するらしい。この点でも、「後期高齢者医療制度」は、極めて身勝手な手続きを行った法である。不埒な家畜以下の制度であるとしか言いようがない。
掛け金も、毎年農家から承諾書を取り付けなければならない。黙って天引きなどした日には、どなりこまれること請け合いである。この点でも、家畜以下の制度であるといえる。
もっとおかしなことに、2年前に決まっていたことであるそうだ??小泉改革で、自己責任を高齢者に張り付けたものである。