菅政府が閣議決定する新たな「防衛計画の大綱」案(2011~15年度)の概要が判明した。大綱案の概要は、北朝鮮の核・ミサイル開発を「脅威」と指摘し、軍事力を急速に増強する中国に懸念を表明する内容で、中国への警戒感を色濃く反映している。仮想徹国を作り、戦力を強化するのは、為政者の常とう手段である。
おりしも、自衛隊は米軍と行動訓練をやった。韓国がオブザーバーで参加している。やっと終わると今度は、韓国が北朝鮮を思い切り刺激する形で、芽と鼻の先で共同訓練をやっている。北朝鮮が何かしでかさないか待っているようですらある。自民党時代と何も変わらないどころか、新たな概念を出してきた。「平和創造国家」という概念である。
沖縄・南西諸島を重要地域と規定しているのは、明らかに中国を意識したものであるが、経済成長を背景に自信満々の中国を刺激するに十分でもある。従来の基盤的な防衛力に対して、これを「動的防衛力」と呼ぶそうである。良く解らないが明らかに中国の特に海軍を意識したものと言える。こうした構想に役に立ったのが、尖閣諸島での漁船拿捕事件である。
今年8月、菅直人の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が、年末の「新防衛計画大綱」作成にむけて、「平和創造国家」という用語を打ち出した。NGOとの民軍協力を具体的に積み上げ、オール・ジャパンの平和構築能力を高めていくとのことであるが、これも良く解らない。
例えば、アフガニスタンでは人道支援や復興支援を行ってゆく。同時にテロとの戦いも進めてゆくというのである。器を持って平和活動をするスタイルは、アメリカがすでに失敗しているのであるが、何を手本にしようとしているのかも良く解らない。
さらには、ノーベル”ヘイワ”賞を受賞した、佐藤栄作が窮余の一策で生み出した、武器輸出三原則も見直すらしい。国連で禁止した国や共産圏や戦争当事国など関係国には武器を輸出しないとすることであるが、これも見直す機運にある。これも良く解らない。
要するに民主党政権は、世界は変わったから日本はもっと軍備を強化しなければならない、というのである。民主党が、防衛大綱の中で仮想敵国や、脅威とした国々と話し合ったり交渉した経緯はほとんどない。にほんが「平和創造国家」になるなら、憲法できているように、武器ではなく話し合いなどによって、紛争や誤解をなくすべきではないだろうか。菅直人は若い頃にはそうした理念に燃えていたはずである。