政府はTPP導入にあたって、農業をもっと強い体質にしなければならないと盛んに言いだした。日本の農産物が高いのは人件費の問題であって、決して生産性が低いからではない。コメなどの伝統農産物に限ると、1000年以上も持続して作られている。効率が悪ければこんなにも続くはずがない。ここで云う効率とは、農業生産効率である。
政府が唱える効率は経済効率である。農業の生産効率とは本来同一であるべきだが、現実には全く異なったないようになってしまう。畜産を例にとるなら、大規模な施設で可能な限り人的労力を減らし、可能な限り多くの家畜を飼うことが最も効率が良い。しかも安価な飼料を与えて、最大生産量を上げることが最も経済的メリットが高くなる。
しかし、飼料は大量のエネルギーを使って海外から輸入する人と競合する製品である。輸入穀物が安価でなくてはならず、販売製品の肉や卵は高くなければならない。家畜は生産効率の良い若い時だけ飼われることになり、少し生産が落ちると廃棄される。廃棄される家畜は効率が良い生産体系である農場の方が圧倒的に多い。
畜産の生産効率はどう見ても無駄が多い。穀物から得られるカロリーを、卵では5分の1、牛乳では8分の1、牛肉では30分の1に落とすことになる。これを可能にするためには、安価な穀物と高い畜産物製品があるからとなる。されに設備投資も相当にかかる。周辺産業は潤うことになる。環境汚染はつきものである。
これに比べて農的な効率では、人が利用することのできない廃棄品や草などを利用した飼料を与え、人が利用できる畜産製品に換えることが基本である。無駄なエネルギーもなければ移動もない。当然生産量は少なくなり、飼養頭数は制限される。家畜たちは健康で、生産製品は誰もが口にできる安全なものとなる。設備投資もなければか環境汚染もない。
米作りや野菜作りや果樹でも基本的には同じである。決して大量には作ることもできないし、農薬や化学肥料の手助けはいらない。しかしこうした形態は、経済効率が悪いとTPPを期に、切り捨てられようとしているのである。