そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

穀物生産と先進国と食糧の自給

2011-01-24 | 政治と金

世界で生産されれる穀物は、22億トンを超えている。これを62億人で除すると、1人当たり350キロほどになる。1日概ね1キロの穀物が消費できることになる。しかし、現実には10億の人が飢え10億の人が肥満に喘いでいる。更に1千万人の人が飢餓で死亡している。その6割が5歳以下である。

つまり食料は、均等に世界を巡っているわけではないのである。当然のことながら穀物は高いところに売り付けられる。それが経済原則と割り切る前に、この大半の穀物を販売しているのが、生産者でもなく国家でもないとしたら、それでも当然のことだと思うだろうか?世界に流通する穀物の7割強は、穀物メジャーが売り歩いているのである。

最大の穀物メジャーである、カーギルは年間8.8兆円も扱っている。ちょっとした国の国家予算程度にもなる。ADM、カビロン、ブンゲ、ルイ・ドレイファスの5社で世界の流通する穀物の殆どを扱っている。穀物メジャーはあの手この手を使って、高いところあるいは高くなるまで待って、多くの場合自社の運送手段で、販売するのである。彼らが貧者に売り込むわけがない。

穀物は生産額の僅か10%程度しか貿易に向けられない。ほとんどの国が自給を前提にしているからである。コメに至っては、6.7%が他国に売られるだけである。又、かつては先進国は工業製品を販売し、後進国は農業製品を販売すると、説明されていましたが現実はこうなっていない。

農産物輸出高が多い順に並べると、アメリカ、オランダ、フランス、ドイツ、ブラジル、ベルギー、イタリア、スペイン、カナダ…結局は、先進国が売り込んでいるのである。当然のことながら、後進国など手が出ない価格となり、貧国は更に貧しくなるのである。

もう一つ別な側面がある。貧国が売り付ける農産物は、先進国で販売されるせいぜい1%程度で販売されているからである。カカオやコーヒー豆は200倍の価格になる。貧国と飢餓がなくならない理由はここにある。

TPPは先進国、しかも農産物を安価に大量に売り込む国家の都合の良い論理である。当分はお金を基軸に回転するであろうが、不均衡な貿易体制はやがて多くの人類にとって、平和に生きていくための障害になることに気が付く日が来るだろう。TPPは天下の愚策である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

羅臼港

春誓い羅臼港