今日の横暴な原子力行政は、広島、長崎そしてビキニの被ばくに始まります。読売系列の日本テレビの日曜の深夜番組、実際は月曜に入りますが、地道なドキュメント番組を作り続けている。
今回は、ビキニ環礁のアメリカの核実験による、被ばく漁師のその後です。地道にこのことを調査する、元高校教師山下正寿さんの成果を追うものであったが、時間が足らない感じは否めない。
1954年に第五福竜丸がビキニの核実験で被ばくし、機関長の久保山愛吉さんが半年後死亡した。アメリカは、核実験を繰り返す一方で核の平和利用へと、東西冷戦の中西側に取り込んだ技術大国日本を、まんまと平和利用へと世論を誘導したのである。昨年に本ブログでも紹介した。
http://blog.goo.ne.jp/okai1179/d/20110704
これに乗ったのが正力松太郎であるが、アメリカは口封じに敗戦国日本に、200万ドル(7億2千万円)を渡し、その後の漁船の被ばく調査をやめさせた。被ばく漁船の実態は闇に放り込まれた。当時の漁船を所有する地区が80ほどあるため、数百隻が被ばくしていたのでないかと思われる。
番組では、残された資料から専門家に、推定被ばく量を計算させていた。それによると、約500ミリシーベルトである。急性の白血病が起きてもおかしくない被ばく量である。事実、ケロイドが出来たり脱毛などの証言が残っている。
もっと怖ろしいことに、この時期の死の灰は、日本にも降り注いでいたのである。さ
らにアメリカはこのことは事前に承知していたことである。事前に、120地点で観測を用意し観測しているからである。その結果から、アメリカは本土が核攻撃された時の資料にしているのである。
その幾度目かの実験結果によりと、(右図参照:クリックすると大きくなります)日本全土が被ばくしているのである。この事実は全く公表されていない。もちろん被害報告も存在しない。
被ばくした漁師たちの多くは、第五福竜丸と同じように若くしてほとんどが、がんや心臓病で亡くなっている。国はこうした事実を認めるどころか、調査も行っていない。保障など何もない。わずかに残された被ばく元漁師たちに、被爆手帳の交付をするべきと、山下さんの運動は続く。
最も耳に残ったのは、被爆者の奥さんの声である。「被ばくを公にすると、漁協や地域の漁師たちに迷惑がかかる。魚が売れなくなる。補償をもらうより、そうしたことが恐ろしい」というのである。
日本は、アメリカの傘下に入ることで、平和利用への障害となる3度目の核被爆を隠ぺいしたのである。今日の、原子力行政の横暴さ、なれ合いと隠ぺい体質はここに始まる。