ロシアの実効支配が続く北方領土問題である。根室の返還運動に、最近微妙な動きが生じている。ロシアが不法に占拠しているが、日本の固有領土であるため四島一括返還を唱える、本筋論の方々。一方現実に目を向けて、経済交流を通じることによって、打開策を求める人たちである。
原則論を譲らないのは、一世の方々である。無念の気持ちが消えることなく、一括返還にこだわっている。この方々は平均年齢でも70代後半であり、65歳以下の方はいない。
疲弊する根室の現状に、経済成長する北方領土を目前にして、原則論にこだわらないで、経済交流を積極的にやる。そのことで、地域の活性と併せて領土問題を考えていこうとする、二世、三世の若い人たちが主流の主張である。
原則論をかざし続けるには、もう若くない人たちはこうした若い世代に押され気味である。
私も一度、ビザなし交流で北方領土を訪れたことがる。択捉に三泊ほどしたが、報道で見るとその町もわずか10年で、大きく様変わりしているのに驚かされる。ビザなし交流は、経済活動がままならなかったロシアが、日本と交流することで一方的に恩恵を恩受ける運動であった。
この10年で大きく変わった北方領土は、経済成長で飛行場が出来たりして変貌したのは街並みばかりではない。豊かになった住民が、自らの足元の権利などを主張し始めたのである。
この間日本政府は一貫して、ロシアと交渉してきたのではないことも大きい。とりわけ小泉は、中国とロシアを一方的に嫌ってきて経緯がある。そうしたことにロシアの経済発展もも相まって、彼らにナショナリズムを引き起こさせてきた。
連合国と日本の不法占拠説も、ロシアに反論の論拠を与える一面がある。ヤルタ会談以降、スターリンは一貫して、樺太南部と千島全島それに北海道の東半分の割譲を主張していた。その間の交渉相手は、イギリスもアメリカも首相や大統領が代わり、中国も実質欠席状態であった。唯一、友好国のはずだったスターリンだけが、ポツダムまで継続的に交渉していた。周到な準備がなされていたとみるべきである。
昨日(11日)サハリンで大々的なデモがあった。南千島は歴史的にロシアのものだというデモである。この極東の僻地で、4000人ものデモが行われたが、日本の報道機関は無視したようである。産経新聞と北海道新聞以外の報道は、ないようである。
北方領土は、これまで政治家にまかせて密室でやられていた、話し合いや交渉ではなく、民間で幅広い論議を国境を越えて論じなければならない時期に来ている。