農業は規模拡大したところで、面積当たりの生産量が増えることはない。農業の基本は、太陽エネルギーを水と大地の力で植物に取り込むことである。このことは、自然界も含めてあらゆる生命を支える基本である。言い換えれば、生命を支えているのは植物の炭酸同化作用(光合成)と言える。
人類はこれを職業化(農業)することで、効率を上げてきた。農業とすることで、品種の改良や土地の肥培管理や灌漑などを行って生産性を上げてきた。それは炭酸同化作用が作り上げるエネルギーを増やしてきた。
近代になって、化学肥料を投入し農薬を使い、機械を使うことで更に効率を上げてきた。
然し、植物の炭酸同化作用にそれほど大きな変化あるわけでない。化学物質を使って一 時の収量を上げても、長年経つと土地や生産物に様々な障害が起きることが判ってきた。化学物質を投入する無機農業は、土壌の保水力や地力一般を持続させることなく、一方的に収奪し異物を残すからである。
家畜の労役に代わる機械化は、農民の重労働を開放し規模拡大や、寒冷地などでの農業も可能になった。
日本は、先進国の中では緯度が低くいが熱帯ほどでもなく適量の日光量で、降水量も多く水も豊富である。植物の炭酸同化作用から類推した、各国の数字が上の表である。
一般的には、オーストラリアやアメリカの方が、農業生産性が高いと思われている。それは人間の労働力当りや、投入資本当たりの収入の金額評価であって、土地や植物から見た真の姿ではない。
単位土地辺りから見た、植物の獲得するエネルギーの量は、日本や韓国の方が圧倒的に高いことが判る。
農業を大型化することは、高額な機械や施設を購入して、大量の化学物質を散布することにもなる。自然の摂理を無視した、大型農業は地球を破壊し、大資本が儲かるだけの仕組みと言える。
その典型が、アベノミクスでありTPPである。農業を土地や植物のレベルから評価するのではなく、金銭評価し投資資本から評価するのである。これは人類破滅の選択と言える。攻める農業とはお金の評価であり、農業が持つ本来の食料生産の意味を失った評価である。
今年は、国連が決めた「世界家族農業年」である。家族型農業が、農産物の安全性を保ち、環境を保全し、地域の雇用を保ち、地域紛争をなくし、飢餓人口を減らすと述べている。国連加盟の世界各国は、国連の警告や指導に従うべきである。
世界的な食糧難が必ず起きる。そのためにも、農業を家族型の規模にしておく必要がある。そしてあらゆる地域で、食糧を自賄いさせ、食糧に自己責任を持たせる必要がある。それが未来志向の農業である。安倍首相は、家族農業を国会答弁で否定した。
日本は世界と全く逆の方向に向かっている。