昨年我が国は、国と地方の負債が1000兆円を越えた。今の報道などは、国のGDPを越えた500兆円当たりの方が騒がれていた。そのご負債は留まることを知らずに、天文学的に拡大する一方で、世界最大の債権国家である。
蔑ろにされるもっとも大きな理由は「財政の健全化は景気の足を引っ張る」という理由である。更に「国債の95%は日本国民が所有している」というものである。国外依存率の高いギリシャやスペインなどとは異なるというものである。
これらは、問題を先延ばしにする、現在を生き延びなければならない政治家にとって、まことに好都合な論理である。
更には、そのために消費増税ばかりが論じられている。これは構造改革に手を付けられたくない、官僚にとって心地よいものである。加えて税収増には、財政投資が必要であるとばかりに、正体不明で不要で不急の公共事業がドンドンやられている。これこそ、財政赤字の原因ともいえるものであるがお構いなしである。
これも、自民党を支援する、土建屋たちとその関連にとっては心地よい政策である。
上記のグラフは、水野和夫氏の「資本主義の終焉と歴史の危機」からコピーしたものである。このグラフは、2人以上の世帯の金融資産の所有率を、年次を追って示したものである。
1987年には、預金を持っていない世帯が僅か3.3%だったのが、2013年には31.0%にもなっているのである。この表には年代が記載されていないが、バブル以降に急上昇していることや、貧困世帯の年代から推察すれば、40才以下が圧倒的に多いと思われる。
これから日本を担う世代が、国債など購入する余裕などないのである。財政再建に無頓着な政治家たちの最大の根拠が消えてしまうのも時間の問題である。
消費増税が景気の足を引っ張る事実は伏せておきながら、財政再建には都合の良い今だけの理屈で蓋をするのは容認できない。国債の保有率が海外の方が多くなれば、財政破たんは一気に起きることになる。これは少子化問題同様、冷静に見れば簡単に予測できることである。
経済成長による税収増は、成熟した高齢化社会では期待できない。不用の財政投資や官僚に対する徹底した、仕分けこそ抵抗があっても、根本解決には取り組まなければならないことである。
現在最も重要な政治的課題は、財政再建である。国家財政の破たんは一国では到底解決できない問題だからである。財政投資を繰り返すアベノミクスは、財政の悪化を広げるだけである。