そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

ガイヤの夜明け「バター不足の闇」という政府広報番組を見た

2016-11-24 | 農業と食
一昨日(11月22日)ガイヤの夜明けというほとんど見たことのない番組を見た。政府の農業政策を推進する立場で制作され、都合の悪いところは隠したま恣意的に番組は進行していった。番組の中で自民党農林部会長の小泉進次郎が、「農家が儲かる政策をする」と述べていたが、そもそも実態を知らない番組制作者が、ごく一部だけを開いて見せた極めて問題の多いものとなっていた。
牛乳という鮮度が求められる特殊な製品は、大根などのように一本では売れない。加工されたものが数多くあり、その内容によって価格が異なるため、価格と量の比率によって農家への生乳価格が決められている。番組で紹介してたのが上の図である。左から飲用向け、バター、ヨーグルト、チーズであるがそれぞれの価格が示されている。その他に、給食用というのがある。多分40円台であるし、チーズはこんなに高いのだろうか?バターやチーズは輸入製品との競合するため押さえられている。そして農家の手取りは、100円足らずというのが現行である。

番組は、バター不足を農協が買い占めている現行制度に問題があるとしているが、それは違う。バターは輸入製品があるため安いのである。番組ではMMJという栃木の乳業会社が、これまでホクレンに出荷していた酪農家を10円高く買うという酪農家を追っていた。10円高いのは当然である。飲用乳だけしか生産してないからである。
農家が高いところに牛乳を売るのは、小泉の言う内容に沿っているのではないか。商流が整われていなかった時代には、北海道とりわけ道東の牛乳は飲用にはできなかった。北海道牛乳は加工向けとされ、輸入乳製品にかけられていた関税を補給金として乳代に上乗せして受け取っていた。このために使われていたのが農協系統(ホクレン)である。府県の酪農家も安価な北海道牛乳が入ってこないように働きかけ、南北戦争と言われた乳価競争ああった。その名残をホクレンは甘い汁のまま吸い続けているのも、大きな問題である。
番組はこうした内容には蓋をして、給食向けの安価な部分の乳代まで含まれていて、それが消費の普及に貢献していることも、省かれた内容になっている。
酪農家が新たな活路を求めて販売先を模索するのは当然のことである。ホクレンの部長がバター不足をあってもいいという発言を、消費者からの視点で番組は告発している。高い製品への比重を上げるのは、生産者にメリットがあって、当然のことである。
かつてのように地域でしか売れなかった飲用乳も、日本の隅々まで届けることができるようになった。ホクレンの部長が言うように輸入品に任せてもいいものがあれば、酪農家の懐は潤うことになる。番組はホクレンをヒール役に仕立て、消費者には諸悪の根源と信じ込ませる内容になっている。
小泉達自民党は、バターなどどうでもいいのである。農協を壊したいのである。かつては票田とまで言われた農村も、閑散としてきてそれほどの力がなくなった。自民党はアメリカの要求に沿って、地方に影響のある金融市場を開放させたいのである。アメリカの声は聞くが農民の声など聞く気がない。農協が邪魔なのである。

ところでネット検索しても、この番組だけが見当たらない。削除されたとあるが、ホクレンが圧力をかけたのであろうが、いつまでもそのような横暴が通じる世の中ではない。MMJの参入で乳価が多分上がるだろうと、北海道の一般酪農家は喜んでいる。ホクレンは農民には信用されていないが、都合の良いカネヅルだとは思っている。
MMJが自分たちでバター工場を作ると準備していたが、これまでの乳価から10円安くしなければ採算が取れないことになり、酪農家にメリットがなくなる。多分失敗するだろう。MMJ出荷農家はそうしたリスクも負うことになる。

番組は酪農家を訪ねる度に、乳牛が放牧された風景を映していたが、MMJに出荷している農家を全戸知っているが、放牧しているところは一戸もない。出荷農家の乳牛は閉じ込められたコンクリートの牛舎で、飼料の半分以上はアメリカからの輸入穀物を給与しているのである。番組は系統を悪役に仕立て、自民党農政に沿った政府広報番組といえる。
コメント (2)
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