そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

ニュージーランドの学び持続可能な農業を

2024-06-09 | 農業と食
「持続可能な酪農をリードするニュージーランド」荒木和秋編著(筑波書房:2,200円+税)は、コロナのパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻以後出版された、日本の酪農のみならず農業全般或いはあらゆる産業にとっても警告と指針になる良書である。
私がニュージーランド(以後NZ)酪農を、直接学習に行ったほぼ20年前から大きく変わっている。NZ酪農産業は主に輸出され、全世界に流通する酪農製品の3割を占めている。輸出金額は2兆円にもなって、450万人の小国にしては相当な金額といえる。
20年前に比して乳牛の頭数はほぼ倍になり、農家戸数と農地は微増しかしていない。乳牛の遺伝的改良と、放牧一辺倒の草だけから穀物の投入など、行われる牛群も出ている。
然し牧草が大きく生乳生産の50~99%を担っている。日本では、大型酪農家になると、30%程度と思われる。
生乳世産量がっく段位上がったNZでは、河川と海洋の汚染などが起きて、「水条約」という具体的な規制が酪農業者と国と地方自治体などで結ばれるようになっている。NZ酪農生産に係わる温室効果ガスの排出量が世界最低となっている。
NZでは親子間の農場の無償継承は禁止されている。そのために、非農業者でも酪農に算入できるが、新規参入者はそれなりに厳しいステップの訓練が求められている。
健全な土地、健全な乳牛そして健全な乳製品というステップを蔑ろにした農業政策が、日本では進められてきた。NZでは酪農家には補助金は存在しないが、市場開拓など政治的支援は巨大な力が発揮される。
外部資源(輸入穀物)と外部資本(補助金)に頼らせた酪農が、温暖化や円安や食料の輸入規制などの世界動向が起きている現在、大きな打撃を被っているのである。NZの酪農に大いに学び、持続可能な農業を模索するべきである。

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