昨年7月統一教会に家庭を破壊された山上達也は、その広告塔として闊歩する安倍晋三を殺害した。山上達也の殺害行為は許されないものであるが、彼の狙いは思った以上の効果を日本社会にもたらされた。
国内のごく一部の人達は、岸信介から連綿と続く勝共連合の思想は、東側社会主義諸国が崩壊してもなお続けられてきた。この暗部を山上は、恐らくは彼の思った以上の効果をもたらした。
やっと動き出した報道は、統一教会と自民党の関係を具に流し始めた。ワイドショウではカメラの前でバレバレの嘘をつく大臣や、被害者家族の実態を延々と流す。おかげで自民党は解散命令の申請を東京地裁に出すという猿芝居まで演じた。
山上達也が銃殺事件を起こしていなければどうなっていただろう。悠々と統一教会は、日本の政治中枢に入り込んで、信者は献金に苦しみ二世信者に未来ははなくなるだろう。
今年10月7日に始まったハマスのイスラエルへの一斉奇襲攻撃は、まるで神風特攻隊のようでもある。初日に5千~8千発のロケット弾を雨のように、イスラエル要所に打ち込んだ。奇襲で1400名を殺害したがそれで終わりである。しかしこの1400名の死者は、4度ある中東戦争でもかつてない数字である。しかし、現在のようなイスラエルの圧倒的な兵力の逆襲を、ハマスは予測していたはずである。
そんな判り切ったこと以上にハマスが狙ったことがある。先ずはサウジアラビアとイスラエルが国交正常化目前であったが、これを阻止できた。これにはサウジのかつての遺恨の敵、中国の介在で握手したイランの存在が大きい。ハマスは中東の地図を変えようよとしている。
もう一つが、世界にイスラエルの悪行を、建国まで遡って世界が一斉に報道し始めてくれた。世界の目を一斉にウクライナから、パレスチナに移すことに成功した。
もう一つはこれまでなかった200名越えの人質の確保である。イスラエル内の政治犯の釈放を交換条件にした。ネタニアフはこれに応じていない。
そして何よりも、このところのイスラエルの国内での、イスラエル側のパレスチナ人地域への攻勢である。パレスチナ人のうっ憤を大いに晴らしてくれた。
しかし、いくらこれらのことを並べ立てても、ガザ市民の死者が1万人を越えているようでは、ほとんど意味をなさない。ハマスは思った以上の効果を得たかもしれないが、それに倍する反撃思った以上の非人道的反撃を受けているといえる。
それで、世界がこぞってイスラエルを非難するかに見えるが、相も変わらず欧米諸国は、イスラエル支持の姿勢から変るものがない。しかし、今回は天井のない監獄の実態や、イスラエルの残虐性などが広く知られるようになった。
ハマスの狙いの一つは叶った。奇襲以前とは比較にならないイスラエルの蛮行が世界に発信されるようになった。
世界は、山上やハマスのような蛮行、やってはならないことをしなければ、被害者の実態も、悲惨な被害者の叫びも見向きもしない。山上やハマスの行為を一方的に非難するべきではない。