シリアの2代目の世襲大統領アサドが復活しつつある。10日テレビを通じて演説し、外国の陰謀勢力がデモを支持し国家秩序を乱していると、国民に訴えた。
シリア国内では、異常と思える暴力的弾圧を繰り返すアサドであるが、ネット以外ではほとんど情報が国外に出てこない。5000人以上の人が弾圧で命を失っているようである。反政府勢力が、国外の協力を求めても、せいぜい経済制裁をする程度である。
リビアに酷似する状況であるが、世界各国は軍事低介入を行う様子がない。最も大きな理由は、シリアには油田がほとんどないことである。
さらに、パレスチナ問題に直接関係し、イスラエルの復権につながりかねないシリアへの攻撃を躊躇っているのである。アサド政権が親子で国内を統治し、政治的軍事的勢力の存在を認めてこなかった経緯も大きい。
更には、中東の春といわれエジプトやリビアで長期独裁政権が、倒れたにも拘らず、あるいはそのために、その後の混乱が一向に収まらない状況もある。
それなら、独裁でも構わないから、アサドに政権に座って貰っている方が世情は安定する。国民は自由の束縛と引き換えに、安定の選択を目指す結果にもつながっている。
シリアの反政府勢力は、今回のアサド大統領の演説は、国民の声を無視したもので、内戦状態になると警告している。国際勢力は協力して、アサド政権の孤立化に追い込むことを訴えている。
上記のような理由で、国際勢力は加入することはない。リビアのように介入したときには、人々の正義と自由と民主化を求めた介入と宣言するものの、実態は国益を優先した介入しかしないのである。
シリアのように、国際勢力は空爆もしなければ兵力をつぎ込むこともやらない。そうしたジレンマを見越した、アサドの勝利演説といえる。当分シリアは、アサドの独裁が続くことになるだろう。
シリアのこの問題が突然わいてでたのは、バハレインやサウジアラビアなどの親米産油国で、民主化要求デモに対して、政権側が発砲し、あわや内乱?という一触即発状態になった時でした。それ以後、
日本メディアはシリア政府の民衆弾圧と、見てきたようなうそを書きます。が、産油国の民衆弾圧は、一切
報道されません。おかしな話です。