当地の農業協同組合、5年前に合併して「道東あさひ農協」となった。日本最大の出荷乳量を誇る農協である。一昨年は、38万3千トン、昨年は36万9千トンとほぼ5%の出荷乳量の減少である。日本全国の約5%を生産する巨大農協にとって、重大な事件である。
そこで、お金の出所は確認してはいないが、乳牛1頭導入すると2万5千円補助するという支援に出た。牛乳出荷量が減ると、様々な障害が起きる。農協の収入が減るし、お金の回りが全体に少なくなる。
しかし、乳量が減った大きな要因は、農家戸数が減ったことがもっとも大きな要因である。農家が減少したことにたいする、策を、講じるのが本筋である。
道東は一戸当たり110頭を超す、日本で最も規模の大きな酪農家地帯である。政府は規模を大きくしてコストダウンを図り、競争力を高める攻める農業をと言っているが、すでに大規模になっている地帯である。
この地帯では、TPPの影が大きくなってから、規模拡大などの投資した農家がほとんどいない。かつては農家が減っても、残った農家が規模拡大し穀物を多給することで個体乳量を増やして、生産量は確保されてきたものである。(表はクリックすると大きくなります)
ところが、規模拡大・高泌乳化にメリットが無く、乳牛の病気ばかりが増えて、乳牛が短命になりメリットがないことに気がつき始めたのである。投資額が巨大になって、経費の増大とロスがあまりにも大きく、経営的な意味もなくなってきたことに気が付き始めたのである。
酪農家戸数は、この40年で40万戸から3万戸足らずにまで減少したが、乳牛頭数はそれほど変わることはない。酪農家がいかに、規模拡大にこれまで努力してきたことか、右の表を見ればわかる。
比較的小規模農家の方が収入が高く、環境にも乳牛にも農家の肉体にもやさしいことに、気が付き始めたともいえる。
今回の農協の規模拡大への奨励は、酪農の現状を理解しない愚策といえる。農協が生き残るために、より多く資金の回転が欲しいだけと受け止められても仕方がない。農家を考えない農協に未来はあるとは思えない。