■황해 「哀しき獣」 2010年 〇〇〇〇〇
(9)
例えばアメリカのマフィア映画には、必然的にイタリア系の人々が
多く登場する。
作品の質はまさにピンからキリまであり、必ずしもマフィア映画の
全てがイタリア系アメリカ人への偏見を助長しているとは言えない。
中国朝鮮族のタクシー運転手が主人公になった「황해(黄海)」
(2010年)という映画を見終わった後、ふと、「ヲタク」が考えた
ことだ。
主人公は6万元(約100万円)の借金を背負い妻をソウルへと出稼ぎに
送り出したものの、妻の消息は途絶え、送金もない。
その上、タクシー運転手の職まで失った主人公は、朝鮮族の請負殺人
ブローカーの話に乗り、6万元でソウルでの殺人を請け負う。
大連から漁船に乗り込み韓国に密航した主人公は、ソウルで殺人を
準備する傍ら、妻を探す。
ところが、予想外の展開に巻き込まれ、金を手に入れるどころか、逆に
命を狙われ追われる身となってしまう。
瀕死の傷を負いながらも数々の修羅場を脱し、ついには妻の居どころを
つきとめるが、妻は、中国に帰ろうとして情夫に殺されてしまう。
主人公は、妻の遺骨とともに故郷を目指し、漁夫を脅し黄海へと
漁船を走らせる。
しかし、主人公の命も、ついに漁船の中で尽き果てる。
年老いた漁夫が、主人公の死体と実際は誰のものかもわからない
遺骨箱を暗い海原に捨てるシーンで映画は終わる。
観る者まで深い虚無の底に沈めるような映画だ。
この映画は、韓国ノワールの傑作として日本でも「哀しき獣」なる
邦題で公開された(2012年)。
例によって、「ヲタク」はこの映画を中国のサイトを通じて観た。
(終わり)
最新の画像[もっと見る]