前回、オロス族、シボ族、9月28日にはモンゴル族、10月20日と22日にはカザフ族について触れましたが、そこで今回「風景、景観」編を一時中断して多民族国家中国を数回にわたって紹介します。
写真をご覧ください。北京での現地ガイド段さんの身分証明書(中国国民は所持が義務付けられています)です。下が古いもので上が日本の写真印刷技術による新しいものです。民族欄がありますが、新しいほうには民族が「満」とあり満州族を意味しています。ところが古い方はサンズイにヌという字が書いてあります。これは「漢」という字の簡体文字です。すなわち多数民族の漢民族を意味しています。ちょっとおかしいですね。この疑問を残して民族についての一般的なことを紹介しておきます。
民族の学問的定義は確定されていないようで本人の帰属意識が一番大切のようです。(以下「多民族国家 中国」(岩波新書)による)
中国では人民共和国建国以来3次にわたって「民族識別」が行はれ第1期には38の民族が認定され1978年から1986年にかけて第3期の識別が行はれ現在の漢民族と55の少数民族が確定し政府は「民族識別」が終了したと宣言しました。 その間1982年から個人単位で「少数民族出身者の身分の回復」が認められ数百万人がその民族出身を漢民族から少数民族に変更しました。出身民族を少数民族に変更した人のなかには、就職、高校と中学の入学試験、計画出産(後記の予定)などに優遇されます。というわけで「少数民族と漢族の両親の間に生まれた子供が少数民族の籍を選ぶのは現在の中国では半ば常識のようなものである」(前記の本p)
実は北京の現地ガイド段さんは漢民族と満州民族(満州八旗の末裔)との間に生まれたダブル(ハーフ)だったのです。これで疑問氷解ですね