「ゾン」は現在ブータンでは12か所あります。元来は日本の戦国時代の城にあたるものですが現在は地方行政、司法と寺院が同居した建物です。首都ティンプーではタシチョ・ゾン(「栄光の宗教砦」という意味)と呼ばれ中央政府機能を兼ねています。写真は右が国会議事堂で左が王宮です。
「建築には、本来は設計図を用いず、釘を一本も使わない。木はふんだんに使用され、巧妙な細工が施され、色彩豊かな種々の意匠が描き出されている」(「ブータンと幸福論」p35)ですが、屋根は写真でははっきりしませんが、トタン葺です。艶消しというか、画竜点睛を欠くといった感じです。現地ガイドのブタさんによれば環境保全、森林保護の立場から以前の板葺の屋根から国策としてこのようにトタン葺になったそうです。これはゾンのみならず民家を含む全建築物がトタン葺でした。
その事情について今枝由郎氏は「ブータンに魅せられて」(p129)で以下のように述べられています。
「ブータンの近代化が始まった当初、動植物資源の豊かな中で森林が最も注目された、しかし1980年代に近隣諸国が犯した森林伐採の過ちを反面教師として、ブータンは抜本的に政策を転換した。先代国王は『ヒマラヤが聳え、雨雪が降り、森林が茂る限り我が国は安泰である』と語った」
現在森林伐採は許可制です。