この10年ほどの間に、商法が何回も改正されて、それ以前の会社の概念が全く変わってしまったのであるが、その集大成と言うべきか、新会社法が、この5月から施行される。
とにかく、会社法専門の弁護士や大学教授でも良く分からないという代物であるから、上手く機能するのかどうか、全く先が思いやられる。
まともな会社法講義と言った専門書がまだ出ていないので、書店に出でている簡易解説本で多少の知識を仕入れているのだが、目まぐるしい変化である。
資本金はいくらでもよいし、9つのタイプの種類株式が発行できるし、年に4回まで配当してもよいし、合併や買収の時には「対価の自由化」で存続会社の株式ではなく金銭その他の財産を対価としても良い、等々、とにかく、頭を切り替えないと、会社とは何かを理解できなくなる。
日経ビジネスが、「事例で学ぶ新会社法」と言う小冊子を出した。
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」の山田真哉で学ぶ!と言うサブタイトルがついていて、結構軽く読める面白い本なので、最後まで読んだが、新会社法と直接関係ないところで興味深く感じた点があったので、それについてコメントしてみたい。
「Opinion 株主は革新の親にあらず 長期思考で常識破れ」と言う座談会で、ハーヴァード大学の「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・クリステンセン教授が、
「経営者は株主の利益を最大にする責任がある」と言うのは、迷信で、エコノミストや経営者が根本的に誤解をしている、のだと言っている。
いわゆる株主至上主義、時価総額極大化主義は幻想だと言うのである。
エコノミストがビジネススクールで教鞭を執るようになり、数学的モデルの構築で、経営者が最適化すべき関数の一つとして「株主利益」選んだだけで、何となく発生したアイデアである。
経営者は株主利益を最大化する責任があると教えて、学生が信じて、社会に出てからその教義を広めたのだ、と言うのである。
更に、経営者が責任を負っているのは企業を長期的に健全に発展させることで、株式売買による利益を最大化する責任は、株主の側にある、とも言っているが、これには全く異存はない。
この話を聞いていると、ミルトン・フリードマンの顔が浮かんでくるが、案外、マネタリストや市場原理主義のエコノミスト達が、ビジネススクールの授業に影響を与えたのかも知れない。
次に面白かったのは、ニイウス コーの末貞郁夫会長が、委員会等設置会社の方がコーポレートガバナンスが効かないので旧来の監査役設置会社に変えたと言っている点である。
委員会等設置会社は、執行役に大きな権限を与え、取締役は経営の監督に徹することによって、「素早い意思決定」と「経営者の監督」が両立できると考えられた。
しかし、執行役の権限が大きすぎる上に、代表執行役の役割が不明確で、独断専行に繋がりかねない。また、取締役会も株主の代表なのか会社の代表なのか分からず、代表取締役を置かないので誰に責任があるのか分からない。と言うのである。
もう一つは、会社はモノではないヒトだと力説する岩井克人東大教授のポスト産業資本主義時代の組織論である。
今や会社の重要な資産は人の能力やアイデアであり、会社のヒトである要素を重視して新しい組織を考えないと、ポスト産業資本主義時代の会社は競争力を維持出来ない、と言う。
ところで、この日経の「新会社法」だが、経済産業省の創設した有限責任事業組合(LLP Limited Liability Partnership)の説明と事例に紙幅の3分の2を割いていて、新会社法の解説書にはなっていないので、その心算で読むと失望する。
とにかく、会社法専門の弁護士や大学教授でも良く分からないという代物であるから、上手く機能するのかどうか、全く先が思いやられる。
まともな会社法講義と言った専門書がまだ出ていないので、書店に出でている簡易解説本で多少の知識を仕入れているのだが、目まぐるしい変化である。
資本金はいくらでもよいし、9つのタイプの種類株式が発行できるし、年に4回まで配当してもよいし、合併や買収の時には「対価の自由化」で存続会社の株式ではなく金銭その他の財産を対価としても良い、等々、とにかく、頭を切り替えないと、会社とは何かを理解できなくなる。
日経ビジネスが、「事例で学ぶ新会社法」と言う小冊子を出した。
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」の山田真哉で学ぶ!と言うサブタイトルがついていて、結構軽く読める面白い本なので、最後まで読んだが、新会社法と直接関係ないところで興味深く感じた点があったので、それについてコメントしてみたい。
「Opinion 株主は革新の親にあらず 長期思考で常識破れ」と言う座談会で、ハーヴァード大学の「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・クリステンセン教授が、
「経営者は株主の利益を最大にする責任がある」と言うのは、迷信で、エコノミストや経営者が根本的に誤解をしている、のだと言っている。
いわゆる株主至上主義、時価総額極大化主義は幻想だと言うのである。
エコノミストがビジネススクールで教鞭を執るようになり、数学的モデルの構築で、経営者が最適化すべき関数の一つとして「株主利益」選んだだけで、何となく発生したアイデアである。
経営者は株主利益を最大化する責任があると教えて、学生が信じて、社会に出てからその教義を広めたのだ、と言うのである。
更に、経営者が責任を負っているのは企業を長期的に健全に発展させることで、株式売買による利益を最大化する責任は、株主の側にある、とも言っているが、これには全く異存はない。
この話を聞いていると、ミルトン・フリードマンの顔が浮かんでくるが、案外、マネタリストや市場原理主義のエコノミスト達が、ビジネススクールの授業に影響を与えたのかも知れない。
次に面白かったのは、ニイウス コーの末貞郁夫会長が、委員会等設置会社の方がコーポレートガバナンスが効かないので旧来の監査役設置会社に変えたと言っている点である。
委員会等設置会社は、執行役に大きな権限を与え、取締役は経営の監督に徹することによって、「素早い意思決定」と「経営者の監督」が両立できると考えられた。
しかし、執行役の権限が大きすぎる上に、代表執行役の役割が不明確で、独断専行に繋がりかねない。また、取締役会も株主の代表なのか会社の代表なのか分からず、代表取締役を置かないので誰に責任があるのか分からない。と言うのである。
もう一つは、会社はモノではないヒトだと力説する岩井克人東大教授のポスト産業資本主義時代の組織論である。
今や会社の重要な資産は人の能力やアイデアであり、会社のヒトである要素を重視して新しい組織を考えないと、ポスト産業資本主義時代の会社は競争力を維持出来ない、と言う。
ところで、この日経の「新会社法」だが、経済産業省の創設した有限責任事業組合(LLP Limited Liability Partnership)の説明と事例に紙幅の3分の2を割いていて、新会社法の解説書にはなっていないので、その心算で読むと失望する。